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その59あーんをさせましょう

「…………起きないな、佐久良のやつ」 疲れているとはいえ、他人の気配に敏感な佐久良がこんなに寝るとは思わなかった。早めに起きるだろうと踏んで作っておいたおじやは、もう冷えている。面倒だが、佐久良には温かいおじやを食べてほしいので、信之助はキッチンへと向かった。 おじやの入った小さい土鍋をコンロの上に置く。そして火をつけて、クツクツと音が鳴るのをジッと待つ。数分でクツクツと音が鳴り始め、少し混ぜた。 「ん。これぐらい温かかったらいいだろ」 スプーンで少しすくって、温まったか確認した。十分に温かくなっていて、火を消したらまた佐久良の部屋に持っていく。 まだ起きてないだろうなと思って部屋に入ると、ちょうど起きたところだったらしい。ぼんやりとした感じで、入ってきた信之助を見た。 「お。起きたか佐久良」 「………はい。じゅうぶん、結構な時間寝たきが、します」 「だろうな。ほら、おじや作ったから。食べるだろ?」 信之助が小さな土鍋を佐久良の目の前に差し出せば、ぼんやりとした表情のまま笑みを見せた。寝起きだからか、ぼんやりとした佐久良が年相応に見えて。少しキュンとしたのは信之助の秘密だ。 しかし、佐久良の笑みには嫌な予感しかしなかった。 「ポチが、食べさせてください」 「やっぱりな!言うと思ったぜ」 「何でも、してくれるんですよね」 「俺が出来ることはな」 「じゃあ、あーんして食べさせてくれることは出来ますよね」 佐久良のオーラは、「断るわけないですよね」と言っているようなもので。信之助は仕方なさそうに、ベッドに腰かけた。 小さな土鍋を乗せたお盆を膝の上に置いて、落とさないように気を付けながらスプーンでおじやをすくう。 「ほら、あーん」 「あーん」 おじやをすくったスプーンを、佐久良の口元に持っていく。それを佐久良は、はふっと少し熱そうに口に含んだ。 「んっ。美味しいですよ、ポチ」 もっとと言うように、佐久良が口を開けたのでもう一度スプーンでおじやをすくった。今度は、ふーふーと息を吹き掛けておじやを少し冷ましてから佐久良に与えた。 「おじやが全部なくなるまで、お願いしますねポチ」 「分かってるよ」 佐久良に言われた通り、おじやがなくなるまで信之助はあーんを続けた。

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