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閑話
【佐久良と信之助、初めての喧嘩】
朝起きて、藤四郎を含め秋島組の組員は困惑していた。何故なら、佐久良と信之助が睨み合っていたのだ。
信之助が、一方的に佐久良を睨んでいる姿は皆何度か見たことはある。だが、信之助に甘い佐久良が睨む姿なんて初めてだった。
何があったのか聞いた方がいいと思うが、2人が醸し出す雰囲気がそれを拒否していた。丸で、この世界は今2人だけしかいないから邪魔をするなと言われているようで。主に、佐久良の醸し出す雰囲気が、だ。
「ちょっ。藤四郎さん、何があったか聞いてくださいよ」
「は?何で俺が聞かなきゃいけないんだよ。てめぇが聞け。下っぱだろ」
「藤四郎さんも組長も、何で下っぱの俺らにはすげー砕けた口調で話すんですか!」
「あ?何か文句あんのか」
佐久良と信之助の雰囲気に耐えられなくなったある組員が、藤四郎に睨み合う理由を聞いてくれと頼んできた。しかし、藤四郎からすれば関わり合いたくないのだ。佐久良と信之助が、下らないことで喧嘩をしていると予想しているからだ。
だから藤四郎は、関わり合う前に逃げようとしているのだが組員がそれを許さない。
聞いてください。面倒。聞いてください………といった感じでやり取りをしていた時だ。今まで、黙って睨んでいた信之助が口を開いた。
「俺、譲らねぇからな」
「はっ。俺だって譲りませんよ」
組員達は、黙って2人を見た。さっきよりもヒートアップした2人の姿に、自然と唾を飲んでしまう。それほど、佐久良と信之助の睨み合いは緊迫していた。
しかし、2人の次の言葉に皆ポカーンとなった。
「だから!“疲れたあなたを癒したい。モコモコ男爵”シリーズが1番に決まってるだろ!!」
「いいえ。“1人なあなたを守りたい。モコモコ騎士”シリーズが1番ですね」
「なんだと!俺よりも、モコモコグッズ収集歴少ないくせに!」
「そんな、収集歴なんて今さら関係ないですよ。全く、あれだけモコモコグッズを集めておきながら、騎士の魅力に気づかないなど」
「それは俺のセリフだからな!男爵の魅力に気づかない佐久良とか、バカだよ。バカ!」
「ポチもバカです」
佐久良と信之助。この2人が喧嘩をしていた理由が、今だったらお分かりだろう。そう。2人はモコモコグッズのことで喧嘩&睨み合いしていたのだ。
藤四郎は呆れた。やっぱりか!というように呆れた。
しかし、次の2人の言葉で藤四郎はさらに呆れた。
「俺はなぁ!お前に癒されてほしいから、これを勧めてるのに!最近お前、疲れすぎてんじゃん!」
「………俺を思って、男爵シリーズ好きでいたんですか」
「そうだよ。騎士シリーズも好きだけどさ、やっぱりお前に癒されてほしいじゃん」
「ポチ………」
もう、砂糖を吐いてしまいそうな勢いである。朝っぱらからこんなものを見せられて。呆れすぎて、藤四郎の中で何かがプツリと切れた。
「………イチャつくなら夜にやれや!!!」
こう叫んだ藤四郎が、後から佐久良にお仕置きされたのは言うまでもなかった。
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