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その64買い物に出掛けましょう
帰りに佐久良と信之助は、晩ごはんの材料を買いにスーパーに来ていた。佐久良はあまり来たことがないらしく、キョロキョロと周りを見回している。信之助も直接来るのは久しぶりで、これを気に買いだめをしておこうと腕を捲りあげた。
いつも材料を買ってきてくれるのは、秋島組の組員。信之助のリクエストしたものは買ってきてくれる。しかし、野菜などは適当に買ってくるため、たまに少し傷み気味の野菜を買ってくることもあった。
「うっし!今回は野菜中心にいっぱい買うぞ」
「野菜ですか?今日いっぱい買って、食べれなかったらどうするんですか?」
「なに。野菜とかは、保存方法をちゃんとしとけば結構日にちはもつの」
大安売りされているキャベツを4玉かごにいれながら、野菜でもちそうなものを吟味する。野菜を吟味しながら今晩のおかずをと考えたが、佐久良がハンバーグをリクエストしたことを思いだし、玉ねぎを大量にいれた。
「今日は、お前の好きな玉ねぎいっぱいのハンバーグにしてやる」
「藤四郎、玉ねぎ苦手みたいですけど大丈夫ですか?」
「大丈夫。藤四郎用に別のハンバーグ作るし」
藤四郎用に特別にハンバーグを作ると聞いて、佐久良がムスッと顔をしかめた。嫉妬である。自分には皆と同じハンバーグだが、藤四郎だけ特別なもの。佐久良が嫉妬しない訳がない。
そんな佐久良の心情を信之助は理解して、仕方ないなぁと言うように笑った。
「ハンバーグの具材を変えるつもりはないけど、形をお前だけ特別にしてやるよ。何の形がいい?」
「ハートで」
「即答だな、おい」
そんな話をしながら、2人は買いたいものをポンポンとかごの中にいれていく。たまに佐久良がいれた食材を、信之助がいらないと戻す場面も見られた。とにかく、賑やかで楽しい買い物だった。
「よっしゃ。いっぱい買えたな」
「ですね」
2人で大量の買い物袋を手に持ち、スーパーを出た時だ。
「見つけたぞ、佐久良」
スーパーを出た2人を待ち構えていたのは、眼鏡をかけてスーツを着た、インテリ系イケメンだった。
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