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その65家族を紹介してあげましょう
2人の前に現れたインテリ系イケメンは、ギロリと佐久良を睨んでいる。睨みながら、少しだけズレ落ちた眼鏡をクイッと人差し指で上げる姿は、すごく似合っていて。
でも、信之助は1度も見たことのない人だった。秋島組の屋敷にも来たことはない。
雰囲気で佐久良のことを知ってると、何となくだが感じとることが出来る。
それに、インテリ系イケメンに睨まれている佐久良も負けじと睨んでいた。佐久良が人を睨むのは珍しく、本気で怒っている証拠でもある。
自分はどうしたらいいんだ。佐久良とインテリ系イケメンを交互に見ながら、信之助がオロオロしていた時だ。
インテリ系イケメンが動き出した。
「ふん。お前が、こんなところで買い物とはな」
「………………………黙っていてください、兄さん」
佐久良の口から出てきた言葉に、信之助は耳を疑った。佐久良は、インテリ系イケメンのことを兄さんと呼んだのだ。確かによく顔を見てみれば、佐久良と似ている。目元がそっくりだ。
兄弟の感動的な再会と思いきや、雰囲気は殺伐としている。
さっきから、スーパーに出入りする客がかかわり合いたくないというように、そそくさと逃げている。
信之助も、正直な気持ち逃げたかった。でも、何となくだが佐久良をインテリ系イケメンと一緒に置いて帰ってはいけない気がしていた。
「全く、家を出ていったと思ったらちんけな組の組長になり。それに今は、こんな訳も分からない―――――――おじさんを家に住まわせているなど」
「俺のことは何とでも言ってもらって構いません。でも、信之助さんのことをバカにするのは兄さんでも許さない」
何か急に佐久良と佐久良の兄の空気が緊迫したものになっていた。
いや、本当にどうしようと信之助が慌て始めた時だ。
「バカにしているわけではない。ただ…………。訳も分からないぐらい可愛いおじさんを私にも紹介しろと言っているんだ!!」
佐久良の兄の言葉に、信之助は驚いた。たぶん、こそっと聞いていた他の客も驚いたはずだ。インテリ系イケメンが、おっさんを可愛いと大きな声で断言したのだ。
「………………佐久良。このさ、インテリ系イケメン、お前のお兄さんなんだよな。その、頭の方は、」
「全然問題ありません。2番目の兄である、津葉樹 兄さんは俺と趣味が似ているだけです」
ジリジリと近づいてくる津葉樹から隠すように、佐久良は信之助をギュッと抱き締めた。
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