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その68お茶会をしましょう
佐久良の兄津葉樹と出会ってから、何となく以前よりも距離が縮まった気がした。まだ恋人らしい触れ合いというものはないが、それを通り越して夫婦っぽく佐久良と信之助はなっている。それに本人達は気づいていない。
「よし。ちゃんとネクタイ結べたな。今日も1日、見回り頑張れよ」
「はい。じゃ、行ってきますポチ」
「おぉ。行ってらっしゃい」
こんな感じの佐久良と信之助を、秋島組の組員は温かい目で見ていた。早く2人が、くっつくようにと。微妙な関係だと秋島組の組員は思っているからこそ、早く幸せになってほしいのだ。
「よし。佐久良達も見送ったことだし。今日もいっぱい掃除して、キレイにしような」
「はい」
佐久良達を見送った信之助は、残った組員と一緒にmy掃除道具を取り出した。そしてエプロンとバンダナをつけて、皆で顔を見合わせて頷き合う。
そして一斉に四方に散らばった。
「何で、昨日の今日でこんなに汚くなるんだよ!!」
文句を言いながら、信之助は物凄いスピードで掃除をしていく。それはまるで鬼のようで、誰も近づけない。
しかし、そんな信之助の姿に臆することなく1人の男が近づいた。それは。
「おはよう、信之助くん。今日も張り切ってるね!」
「あ、誠太郎さん」
信之助に声をかけたのは誠太郎で、その後ろから晴がこっそりと顔を覗かせた。珍しい組み合わせだと思ったが、藤四郎の恋人を誠太郎が知らないわけないだろうと思うことにした。
「お久しぶりです。晴くんも。久しぶり」
「メールでいつもやり取りしてるんで、久しぶりって感覚しないんですけどね」
「ははっ。俺もそう思うよ。ところで、2人共どうしたんですか?何か俺に用事でも?」
「そうそう!美味しいお茶の茶葉が入ったから、どうかなって」
「俺は美味しい和菓子を頂いたので、どうかなと」
誠太郎が、茶葉が入った缶を。晴が、和菓子の入った箱を信之助に見せた。まだ掃除をしているが、せっかく来てくれているし。それに、美味しいお茶も気になるし、和菓子も気になる。
掃除よりも、その欲望達の方が強くなり。
「じゃ、早いですけどお茶会とやらを開いてみますか。美味しいお茶を飲みながら、和菓子を食べる。いいと思うんですけど」
「お、いいね。じゃ、キッチンへレッツラゴーだ」
信之助と誠太郎と晴は、お茶会を開くためにまずはキッチンへと向かうことにした。
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