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プロローグ4
「チャンスをやろうか?」
苦痛で顔を歪ませる高橋に、創造主はまろやかさを含んだ優しい声で語りかけてきた。
「チャンスだと?」
手を差し伸べるような言葉をそのまま鵜飲みにできないのは、生きていたときの経験で培った勘が、高橋の中にあったからだった。
何気ない親切心からなされるものなのか――あるいは相手を落とし込むための罠なのかを見極めるには、ある程度相手の話を聞かなければ、判断することができない。
「お前、江藤という男に逢いたくはないのか?」
青年の名前を出されたせいで、高橋の眉間にさらに深い皺が刻まれた。
「……二度と逢えない歪んだ関係を築いた俺に、わざわざそんなことを訊ねるなんて、創造主といえども馬鹿なのかもしれませんね」
殺されることを想定しつつ、卑下した言葉を吐いてみた。
「歪んだ関係か。確かに生産性を伴わない男同士の恋愛そのものが、歪んだ関係と言えよう」
顔色を窺えない会話は、受話器から相手の声を聞く電話のやり取りと同じだった。声色の感じで心情を読み取り、何を求めているかを探るのは高橋の得意なことなれど、相手が創造主となるとまた別だった。
こちら側の心情を先読みされるため、さっきから思考が追いつかない――。
「それでお前は、私が提案したチャンスを生かすのか?」
高橋が次の一手を考える間に、創造主がふたたび同じことを訊ねた。
「断れば、蟻を殺すみたいに俺を簡単に殺すのでしょう?」
間髪おかずに答えた言葉に、ふふっと笑い声を立てる。
「考えた内容をそのまま口にして、私の出方を待つその戦略。実に面白いじゃないか」
「ありがとうございます。俺がここに連れて来られた時点で、何もかもが拘束されていることに、やっと気がつきましたから」
躰を何かにがんじがらめにされているだけじゃなく、心の中までも創造主に読まれることで、提案されたことを断れない状況下におかれていた。
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