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プロローグ7

 かけられた声でゆっくり目を開けると、顔を覆う白金髪に目が留まる。肩のラインを少し超えたそれに触れながら、着ている服に視線を移した。  首元にはストールが巻きつけられていて、神父が身につける祭服のようなデザインの服の長さは足首まであり、前開きでボタンがたくさんついていた。色は深いグレーで、腰には縄のようなものが巻きつき、しかも――。 「なぁ、どうして下着をつけていないんだ? スカスカして気持ち悪い」 「人間は物を食べて活動しているが、夢の番人は何を食べて活動できると思う?」 「夢。じゃないのは分かります」  下着をつけていない時点で何となく答えが分かったが、あえてそれを口にしなかった。 「答えは人間の『精』だ。インキュバスやサキュバスという言葉を聞いたことがあるだろ?」 「つまり善人の悪夢を消し去りながら、淫行しろということでしょうか」 「もちろん夢の中でだ。現実世界でも不特定多数の相手と、いろんなコトをしてきたお前なら、それはそれは簡単な行為だろ」 (俺が選ばれたワケって、間違いなくそれだろ――) 「ぁ、あの……。人間の精が夢の番人にとって大切なことは分かるんですけど、この躰に精をいただくってつまり――」  両手を握りしめながら訊ねた高橋の言葉は、ところどころ震えるものになった。 「受け手側になればいいだけのことだ。お前の趣味趣向に合わせて、綺麗な顔をした男の躰にしてやったが、女の躰にすることも可能だぞ」 「や、それはちょっと……」  夢の中とはいえ、いろんな男に抱かれなきゃ生きていけない自分の境遇に、深い落とし穴に落とされた気分に陥る。 「ちなみに悪夢の消し去り方だが、腰の縄を外してみろ」  黙ったまま言われた通りに外してみたら、手にしっくりくる黒光りした鞭に早変わりした。 「夢の番人の装備品は使い慣れてるものがいいと思って、私がいつも選んでいる。お前ならその武器を、自在に操ることができるだろう?」 「そこまで上手く扱えるとは、自分では思っていませんけどね」 「謙遜するな。それを使って、悪夢の中にいる原因を鞭で打てばいい。さすればお前は生きた躰に、無事に戻ることができるのだからな」 「はい……」  楽しくプレイするのに使っていた現実とは違い、元の躰に戻るために鞭を使わなければならないとは情けない。

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