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現の夢10

(水分を吸ったスポンジみたいに、躰がやけに重い……。変なのはそれだけじゃなく、夢の中であれだけいやらしいコトをしたのに、夢精をしていないなんて――)  不思議すぎると思いながら、視線を落としたときだった。ベッドに沿うように、誰かが床に横たわっているのが目に留まる。  プラチナブロンドの長い髪と、見覚えのある独特な衣装を身にまとったその人は、自分のほうを向いていないので顔が分からなかったが、さっきまでその姿を見ていたから、誰なのかがすぐに分かった。 「番人さま?」  そっと声をかけてみたけれど、ぴくりとも動かない。  夢の中で最後のほうは乱暴な感じで抱いてしまったので、もしかしたら疲れ果てて眠っているのかもしれないと考え、起こさないように上手くベッドから降り立った瞬間だった。 「んっ……」 「わっ!」  声と一緒にむくりと起き上がった挙動に驚き、敦士は慌てて退いた。  トロンとした眠そうな顔で、目を擦りながら自分を見つめる番人の視線に、頬がじわりと赤くなっていくのが分かった。胸のドキドキが、さらに高まっていく。 「敦士、もしかして俺が見えるのか?」  まじまじと凝視する視線に違和感を覚えたのか、番人が夢の中と同じ口調で訊ねてきた。 「みっ、見えます」 「そうか。お前から精をたんまりと貰った繋がりで、俺の姿が見えるようになったのかもな」  ゆっくりと立ち上がり、退いた敦士に番人が近づきながら意味ありげに見下ろす。目の前にある唇に長い髪がくっついていたので、取ってあげようと手を伸ばした。  夢の中と同じ身長差――自分の目線のちょっとだけ下の辺りに、番人の唇がある。しかしながら唇を触るには勇気がいるので、髪の毛に直接触れようと人差し指と親指で摘みかけた瞬間、番人の頬の中を自分の指が音もなく貫いてしまった。 「ひいぃっ!」 (肌の温度も触れた感触すらなかった。まるで何もないところに、手を伸ばした感じだったな。でも目の前には、番人さまがちゃんと実在しているのに……)

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