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理想と現実の狭間で6
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首にかけた長いストールと一緒に、白金髪をなびかせて飛び出していった番人の後ろ姿を、敦士はいつまでも見送った。
夢の中とは違う、冷ややかな眼差しを注がれながら、綺麗な形をした唇から告げられるセリフに、いちいち一喜一憂した先ほどまでのやり取りを振り返る。
会社のお荷物になっている、部署に勤めているだけじゃなく、仕事のできない自分を表す企画書を見せたことが、とても恥ずかしかった。
他にも企画書を読み進めていくうちに、番人の顔色が険しいものになったのを目の当たりにして、悔しさをひしひしと感じた。
(――番人様に認められたい)
憧れる彼に、少しでもいいから認められたいと強く思った。
「林さん、今日中に用意しなきゃいけない営業部の書類、印刷は終わっているのでしょうか?」
隣にいる同僚に、勇んで声をかけてみた。やらなければならない仕事を先に終わらせてから、企画書に手をつけようと考えた。
「まだ終わってない。今回会議に使う資料が多くて、まとめるのも大変そうだよ」
「分かりました。一緒にやっつけましょうね」
番人に見せたばかりの、青いファイルを隅に退けて、印刷が終わっている資料を並べていく。
(いつもより量の多い印刷物に、手をこまねいている場合じゃない。早く終わらせて、番人さまの指示通りに、企画書を見直すぞ!)
目の前にそびえる仕事を手早く片付けることを考えるだけで、作業に集中して取り組むことができたが、印刷物をまとめるのにちょっとだけ時間をとられてしまった。
それでも集中力を持続したまま、お昼前には企画書の手直しができたのだった。
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