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理想と現実の狭間で14
(こんなにも番人さまのことを想っているのに、胸の痛みしか感じられないなんて――)
集中力を欠いた状態では、仕事に支障をきたすと考え、デスク周りを片付けたのちに、肩を落としたまま退社した。途中、コンビニに寄って晩ごはんを調達する。ビニール袋を揺らしながら、自宅マンションに向かった。
ため息をつきながら、なんの気なしに夜空を見上げると、青白く光り輝くものが目に留まった。
それは見覚えのあるプラチナブロンド色の柔らかい髪と一緒に、ストールを風になびかせて空中を浮遊する、ずっとお逢いしたかった人物に間違いなかった。
「番人さま!?」
向かっている方角は、敦士の自宅マンションのようだった。
慌てて駆け出しながら、番人の姿を目で追いかける。やがて大きな建物の中へと、吸い込まれるように消えてしまった。
涙目を擦って急いで階段を駆け上がり、高鳴る胸をどうにか抑えつつ、自宅のカギを開けた。
扉を開けて電気をつけないまま、自宅にあがり込んだ先には、リビングの中央に立ちつくす、ひょろっとした番人の姿があった。
「ばっ番人、さま?」
敦士の問いかけがたどたどしくなってしまった理由は、以前見たときと番人の放つオーラの色が違っていたから。
眩いばかりの神々しさを感じたはずなのに、目の前にいる番人からは、それがほんの僅かにしか感じられなかった。
「何度か来たことはあったんだが、なかなかお前に逢えずにいた。しかもここ最近は、随分と夜も遅くに帰っていたみたいだな」
「はい。番人さまに見てもらった企画が準優勝をいただけたお蔭で、部署が変わったんです」
番人から視線を逸らさず、手に持っていたビニール袋を足元に静かに置く。
「そうか、それは良かったな。お前の内に秘めた実力が認められて、なによりだ」
「はい……」
(こんなふうに番人さまに褒められたら、以前の僕ならもっと喜んでいたはず。それなのに今は、嬉しさ以上に虚しく思ってしまうなんて――)
「随分と、疲れた顔をしているな」
番人の背後にある窓から、ほんのりとした月明かりが入り込んでいた。その明かりを頼りに、顔色を指摘したことが分かった。
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