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光4

『心を許したのは、お前だけだ!!』  目を閉じながら、男性のことを思い出そうとしてみても、昏い脳内に消え失せそうな青白い光しか、浮かんでこなかった。まるで、幽霊みたいな感じの印象が残る。  しかも考えれば考えるほどにつらくて切ないのに、その切なさはいつの間にか敦士の心をすり抜けて、泡のようにすぐになくなってしまった。  自分自身の感情のなさに呆れながら、やりかけのパソコンの仕事をバックアップしたのちに、電源を落とす。  真っ暗な画面に、ぼんやりと顔が映りこんだ。  やりがいのある仕事をしているのに、どこか面白くなさそうな顔をしている自分に向かって、無意味に微笑みかけた。それは笑っているのに、泣き出しそうなものにも見える。  頭を振って唇に湛えた笑みを消し去り、勢いよく椅子から立ち上がった。ランチを断った女子社員に見つからないように出かけて、お昼を調達しなければならない。  頭の中でそのことを考えているのに、立ち上がったままの状態から、動くことができない。金縛りとは違う反射的な躰の反応に、またしても敦士の中でクエスチョンが増える。 (――僕はいったい、誰のことを待っているんだろう?)  何も感じない心を抱えているのに、誰かを待っている気がして、どうしても動く気になれなかった。  誰かと待ち合わせをした記憶は、まったくない。それなのに今ここを動いてしまったら、二度と逢いたい人に逢えなくなる感覚に、敦士は囚われたのだった。

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