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光8

 企画を提出する前の下書きに、たくさんの走り書きがなされていた。その内容が自分では考えつかないものばかりだったので、不思議に思っていた謎のひとつだった。  欠落したとても大切だと思える記憶と、大きくあいている胸の穴。自分では考えつかない内容の走り書き。それらすべてについて、目の前の男性が関わっていることで、謎が解明できるのが分かり、敦士は安堵のため息をついた。 「敦士のその顔、分からないことが分かって、スッキリしたといったところか」 「はい、ずっと考えていたことなので。思い出そうとしても青白い光が浮かんだり、印象に残っている掛け声ばかりが頭に残っていて、肝心なところが分からないままでしたから」 「印象に残った掛け声。それは、俺の怒鳴り声ばかりだったんじゃないのか?」  肩を揺すりながら笑い出す男性につられて、敦士も声をたてて笑ってしまった。 「でもそれのお蔭で新しい部署でも、きちんと仕事に従事することができているんです」 「あんなのが役に立っているというのなら、良かったというべきなのか」 「でも今はその声も、聞くことができなくなりました」  敦士は笑いを消し去って、現在のことを告げた。少し離れた位置から、男性が真面目な面持ちで見つめ返す。 「俺がこうして完全復活したから、夢の番人としての声が聞こえなくなったのかもしれない」 「…………」 「人は年齢を重ねると、自分をよく見せようとして、見栄を張ったり見た目を良くしようとする。相手に好かれるために」  唐突に語りだした男性のセリフを聞きながら、敦士は首を縦に振った。自分にも、覚えのあることだった。 「俺は欲望を満たすためだけに、たくさんの嘘を重ねて人を騙して、心と躰をおもちゃにしてきた愚かな人間だ。そんなことばかりしていたから、恋を実らせることもできずに終わった。自分の手で腐らせてしまった」  眉根を寄せながら右手に拳を作る姿に、痛々しさを感じた。それと同時に、自身の悪行をさらけ出す男性が、すごいなと思わずにはいられなかった。  自分なら、何としてでも隠そうとしてしまう内容だというのに、惜しげもなく堂々と語ることのできる、メンタルの強さを目の当たりにしたからこそ訊ねてしまった。

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