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光9

「どうして貴方は、そこまで自分をさらけ出すことができるんですか?」  身を乗り出して訊ねた敦士の視線から逃れるように、男性は瞼を伏せた。 「お前には嘘がつけない。俺が弱りきって死にかけた格好悪いところや、他にもいろんなものを見せてる。敦士自身も偽りのない姿を、俺に見せてくれているから」 「僕も?」  敦士が疑問を投げかけたのを機に、男性は伏せていた瞼を上げて、見据えるように凝視した。 「ああ。想いを真っ直ぐぶつけてくれた。すごく嬉しかった。こんな俺でも、愛してくれるんだって」  男性から注がれる眼差しは、告げられたセリフを表すかのように、熱を帯びていた。 「僕は貴方を……好き――」  男性の耳に、敦士の小さな呟きが届いたのかは分からない。それでも目の前で艶やかに微笑む雰囲気から、間違いなく自分に好意を抱いていることが分かった。 (どうして僕は、こんなにも尻込みしてしまうんだろう? この人が好きなら好きで、飛び込んでいけばいいだけなのに、どうしてもそれができない……) 「俺が夢の番人として、お前と最後に逢ったとき。残念なゴタゴタがあった」  男性の微笑みが、泣き出しそうな笑みに早変わりした。敦士は胸元を押さえながら、話の続きに聞き入る。 「夢は夢でも、悪夢の中じゃないと逢うことができない俺たちは、ずっとすれ違ったままでいた」 「それじゃあ貴方は、夢の番人としてのエネルギーを、僕から得ることができていないんじゃ」 「そうだ。だから仕方なく、他の奴から徴収するしか手がなかった。とはいえ俺の姿は相手に見えない状態で、無理やり搾取するという形だったけどな」  悪夢を見られなかったせいで、男性が他の人と関係を持ってしまった――相手には認識できない行為とはいえ、その事実を考えただけで胸が潰れそうなくらいの、何とも言えない痛みを感じた。  いろんなわけがあっても敦士にとって、それは耐え難いものだった。 「やはり、あのときと同じ状況になるか。当然だよな」  暗く沈んでいく敦士の表情に、男性は途方に暮れた顔つきになる。 「貴方は、何でそのこと……。どうして、隠してくれなかったんですか。こんなにつらいこと、僕は知りたくなかった!」

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