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光13
何度もここに足を運んだ高橋を見て、敦士は労う感じで微笑んだというのに、目の前にある顔はずっと冴えないままだった。
「3度目の正直か。いい加減に腹をくくらなければ」
「そんな、大げさな」
「そう言うが、実際に付き合うことになったら、いろいろ大変なんだぞ。特にお前の相手をするとなったら、躰がいくつあっても足りない」
さきほどよりも頬を染めてじと目で睨む高橋に、敦士は腑に落ちないというふうに小首を傾げた。
「どういう意味ですか?」
「お前は顔に似合わず、絶倫だからな。生身の躰で相手をしたら、俺は壊れてしまうと思ったんだ」
「ぜっ!? ちょっと待ってください。僕はそんなんじゃないですって!」
「空が白んできても、アソコをまったく衰えさせることなく、俺をここぞとばかりに突きまくったくせして、よく否定できるな」
呆れた表情をありありと浮かべて告げた高橋の言葉に、今度は敦士が顔を真っ赤にした。
「僕、そんなに……。いや、それ嘘ですよね」
「記憶のないお前に説明しても、まったく説得力のない話になるが、そのお蔭で俺は余裕をもって、夢の番人の仕事に従事することができた」
あらぬほうを見て、想いを馳せるように言いきった高橋を、頬に熱を感じながら黙って見下ろすしかなかった。
「安心しろ。ただ性欲が強いだけじゃない。お前の想いの強さが、そっちに変換された形になっただけだろう」
「想いの強さ?」
「そういうことにしておいたほうが、気が楽なんじゃないのか?」
してやったりな顔で微笑む高橋を見て、敦士はどうしていいか分からなくなる。さっきまで主導権を握っていたはずだったのに、大人の余裕を見せつけられながら、見事に奪還されてしまった。
(高橋さんと付き合うことになったら、僕はきっとこうして、翻弄させられっぱなしなんだろうな――)
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