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光14

「やっぱりお前の困った顔を見るのが、二番目に安心できる」 「そんなぁ……」  言いながら両腕の力を緩めると、高橋の躰がくるりと反転して、しがみつくように抱きついた。 「一番安心できるのは、こうしてお前の熱を直に感じることだ」 「僕も同じです」 「だがこのままでいても、何もはじまらない。とりあえず飯を食いに行こう」  高橋は敦士の胸を押して抜け出そうと試みたが、その動きに反発するように両腕に力を入れた。 「敦士、反抗するな」  胸の中からじろりと鋭く睨まれて、一瞬だじろいだが、しっかり確約させなければと口火を切る。 「高橋さんお願いですから、僕を捨てないでください」 「それは、俺からのお願いになると思うがな」 「僕は貴方を捨てません。絶対に!」  きっぱりと断言した敦士に、高橋は満面の笑みを浮かべた。その笑顔に、例のプラチナブロンドの外国人の顔が重なる。  それを見た刹那、胸の中にじんわりとしたものと切なくなる感情が入り混じり、複雑な心境に陥った。だが自分の胸の中にいる高橋のぬくもりを肌に感じた途端に、愛しさがひしひしと湧き上がり、マイナスな感情が瞬く間に消え去っていった。  夢の中じゃない、現実の出来事を改めて感じて、自分の選択が間違っていないことを知る。 「お前が俺に逢うために悪夢を見ようと、頑張っていたのを知ってる」 「そうなんですか?」 「一瞬だったが、お前が調べ物をしていたネットの履歴で、それを知った。すごく嬉しかった。その頑張りに報いたいと思って、この躰に戻ってから、必死にリハビリに励んだ。3ヶ月も時間はかかってしまったが。それでもこうして出逢えただけじゃなく、お前は俺を受け入れてくれた」  敦士はしんみり語る高橋の右手を取り、通りに沿って歩き出した。 「僕としては、高橋さんと現実世界で逢うだけじゃ足りないです。夢の中でだって逢いたい」 「敦士……」 「高橋さんと逢ったことで、胸にあいた穴が埋まったせいでしょうか。不思議といろんなワガママが、たくさん出てきてしまいます。伝えても伝えきれないほどに」  繋いだ手から伝わってくる高橋のぬくもりを逃がさないように、さらにぎゅっと握りしめた。

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