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番外編:貴方に逢えたから9

***  シャワーを浴び終えてリビングに戻ると、テーブルの上には、カツカレーが用意されていた。 「僕の好きなもの……。健吾さん、ありがとうございます」  用意されたテーブルの前に、嬉々として正座したら、憂いを湛えたまなざしが自分を射竦める。 「喜んでるところ悪いが、はじめてカツを作ったからな。美味しいかどうかは、正直なところ分からないぞ」  向かい側であぐらをかいた恋人を見つめつつ、満足げに頬を緩ませた。 「健吾さんの作るものは、全部美味しいですよ。いただきます!」  カツと一緒にカレーをスプーンですくって、はぐっと食べた。サクサクの衣とカレールーのスパイシーな感じが、絶妙にマッチしていた。口の中でそれぞれの美味しさが、ここぞとばかりに弾ける。 「……どうだ?」 「ふっごくおいひいですっ!」  口の中のものを完全に咀嚼していないのは、かなりはしたないことだと理解していても、感想を告げずにはいられなかった。 「そうか、良かった……」  安堵のため息を深くついてから、同じようにカレーに手をつける恋人の姿を、口を動かしながらじっと眺めた。 (同じ食器を使って、同じ物を食べているはずなのに、健吾さんの食べ方はいつも上品で見惚れてしまうな。僕との違いは、どこにあるんだろう?) 「敦士どうした。俺のことをそんなに見つめて」 「へっ!? あっ、そのぅ」 「俺を食べたいのは分かるが、今はテーブルの上にある、カツカレーに集中してくれ」  さらりとすごいことを言われたせいで、顔じゅうが一瞬で熱くなってしまう。 「違っ、そんなんじゃないですって」 「だったら、食べたくないのか?」 「やっ、あとから必ず食べますけど……」 「ということは敦士にとって俺自身は、食後のデザートになるのか?」  くすくす笑う口達者な恋人に、どうにも反論ができず赤ら顔をそのままに、カツカレーを食べることになった。

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