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番外編:貴方に逢えたから12
「こんなふうに敦士に感動されるとは、思ってもみなかった。だけど――」
「だ、けど?」
震える声で訊ねた僕を、健吾さんは困惑したような目つきで見下ろした。
「こんな俺でも愛してくれる人がいることを、改めて実感させられた。嬉しいものだな。きっと敦士が嬉しい気持ちになっているのと、同じだと思う」
「健吾さんとおそろいですね」
「昔の自分が、こんなことで喜んでる今の俺を見たら、間違いなくせせら笑って馬鹿にすると思う。あの頃と現在とじゃ、まったく価値観が変わっているから」
視線をちょっとだけ上げて、ぼんやりとどこかを見る健吾さんを、浮かんできた涙を拭って、彼の顔を黙ったまま凝視した。
酷いことをしてきた、過去の姿がまったく想像できないところはあれど、それらをひっくるめて、今の彼を愛していることを考えるだけで、胸の奥が熱くなる。
(こんなふうに、大好きな人に抱きしめられているから、尚更熱くなってしまうのかな)
「夢の番人になって、いろんな人間の悪夢を見てきた。恐怖を与える種類は人それぞれあったが、現実世界においては、俺の存在自体が悪夢を与える人間になっていたと思う」
「そんな……」
「だから殺される勢いで、傷つけてしまった自社の社員に刺されてしまったんだ。だけど、悪いことばかりじゃなかった」
健吾さんは頬を寄せて、僕の躰をぎゅっと抱きしめる。
「お前と逢うことができて、俺は変わることができた」
「僕も同じです。貴方に逢うことができたから、失っていた欠片を取り戻すことができました」
もし出逢うことがなければ、空虚な胸の穴を抱えたまま、流されるように生活していたに違いない――。
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