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番外編:貴方に逢えたから14

***  シャワーを浴びる水音は、とうの昔に聞こえなくなったというのに、未だに健吾さんの姿は見えなかった。 『おいおい……。そんなにご褒美が、待ち遠しかったのか』  なんていう声が頭の中に聞こえてきたわけは、ちゃっかり全裸待機しているせいかもしれない。  準備万端な理由としては、1秒でも早く彼を抱きたかったから。毎晩何度も抱いているというのに、こうして愛おしく想ってしまうのは、彼のことが好きで堪らないせいだと思う。  他に気になっていることといえば、ご褒美についてだった。  アッチの経験がまったくない僕と違って、経験豊富な彼がご褒美というからには、かなりすごいものを用意しそうな気がする。 (僕自身が健吾さんにできることが限られすぎていて、なんだか申し訳ないな――)  全裸で横たわっているため、直に布団の温かさが手伝って、うとうとしかけたときだった。部屋の照明がいきなり落とされたせいで、目をしっかり開けても、何も見えなくなってしまった。 「健吾さん?」  起き上がりながら声をかけたと同時に、勢いよく開かれたカーテン。  外を明るく照らす街灯と一緒に、月明かりが優しく差し込んできて、それを煌めかせる働きをした。 「わっ……」  細身の躰を覆うプラチナブロンドが、月明かりを浴びてキラキラしているけれど、逆光のせいで表情はまったく分からない。だけど漂う雰囲気から、健吾さんが微笑んでいる様子が伝わってきた。 「夢の番人の姿に近づけてみたのだが、このカツラに似合わない、ものすごく不細工な顔を見せるのに、かなり勇気が必要だ」 「だから、部屋の明かりを消したんですか?」 「それもあるがお前と逢っていたときは、いつもほんのり薄暗い感じだったから」  健吾さんが歩き出してこっちに近づいてくる、ほんの一瞬の間に、外の明かりが彼の姿をはっきりと映し出した。  確かに日本人の顔には似合わない、プラチナブロンドのカツラを被っているせいで違和感が拭えないのに、強い意思を表している目元に既視感があった。

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