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番外編:貴方に逢えたから15

(顔は違うかもしれないのに、なんとなく見覚えがある。どうしようもないヘタレ野郎の僕を、夢の中で助けてくれた人なんだな。こうして射竦めるように見つめられるだけで、躰の中が沸騰したように熱くなってしまうのは、この人を好きになったことを躰が覚えているからだろう。記憶のない恋をしたはずなのに、ふたたび健吾さんを好きになってしまったのは、まるで運命みたいに感じる――)  熱く疼く胸の内を再確認していると、バスローブを身にまとった健吾さんが、腰に巻いていた帯紐をするりと外すなり、僕の両手首に巻きつけた。 「えっ? な、なんで!?」 「ご褒美をくれてやると言っただろう」 「こんなふうに縛られたら、健吾さんを抱きしめられないですよ」  苦情を言ったというのに布団を捲り上げ、バスローブをその場に脱ぎ捨てて跨ってきた。 「お前はそのまま、横たわっていればいい。やりたいことを言ってくれたら、そのとおりに動いてやる」  ふわりと笑った、健吾さんの顔が近づいてきた。背中を覆うプラチナブロンドがさらさら流れ落ちてきて、僕の周りを見えなくする。  その感じが蜜事を隠すカーテンみたいに思えて、ドキドキがさらに加速していった。 「好きです、健吾さん」  唇が重ねられる前に告げた言葉で、健吾さんの動きがぴたりと止まった。 「敦士……」  唐突な愛の告白に困ったのか、目の前にある顔は照れた感じじゃなく、放心した表情に見えた。

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