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番外編:貴方に逢えたから17

 ちょっとでも僕が腰を引けば、抜けてしまいそうな危うさがあった。それを阻止しようと下から突き上げたら、健吾さんがその分だけ腰を引いて、もとに戻した。 「やっ! ぬ、抜かないで!」 「大丈夫だ。せっかく繋がったのに、抜くわけないだろ」  僕をじっと見下ろす健吾さんの細められた瞳が、窓から差し込む月明かりで、意地悪くきらりと光った。  拘束されたままの両手首に、ギリギリのところで寸止めされている僕自身。両手が自由なら健吾さんに抱きついて、無理やりにでも奥深く埋めるのに、それができないじれったさのせいで、余計に彼が欲しくて堪らなくなった。 「敦士、どうした。もの言いたげな顔をしてる」 「だって健吾さんともっと繋がりたいのに、こんなふうにされたら不安になる」 「それは不安な気持ち……、だけなのか?」  問いかけた彼の腰が少しだけ下にずるずる動いて、さっきよりも挿入された。  僕の返事を聞いて、このまま深く繋がると思ったのも束の間、途中で動きを止められてしまった。最奥までは、程遠い位置でストップする。 「健吾さんっ!」 「お前が感じているのは、不安だけなのか?」 「それは――」 「俺は敦士の想いに応えたい。お前の望むものすべてを、きちんと叶えてやりたいんだ」  言いながらふたたび腰を上げる健吾さんに、縛られたままの両手首を見せながら、懇願するように口を開く。 「だったら、これを外してください。それから……っ!」 「それから?」  健吾さんは、必死に訴えかけた僕の顔を覗き込んだ。鼻先ギリギリまで近づけられた顔はプラチナブロンドのせいか、いつもの見慣れたものじゃなく、妖艶な雰囲気をまとっていて、頬に熱を持ってしまった。 「敦士、早く言わなければ、このまま抜けてしまうかもしれないぞ」  ゆるゆる上げられる腰の動きに、自然と焦りが募っていく。

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