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番外編:貴方に逢えたから21

「健吾さんを抱きつぶすなんて、そんなの――」  今まで我慢していた分を含めて、思う存分に抱いてしまったら、それこそ言葉通りになってしまうのは、火を見るよりも明らかだった。  好きという気持ちのダムを決壊させようとする恋人が、興奮して息をきらす僕を見ながら、切なげに微笑む。自嘲的な笑みは何度か見たことのあるもので、こんな表情をさせてしまうことに、首を傾げるしかない。 「俺は絶望的な片想いをして、誰にも愛されないまま、一度死んでしまった。こんな俺でも、過去に愛してくれた人がいたかもしれないが、片想いをするまでは、そんな気持ちに一切見向きもしなかった」 「僕は誰かを好きになっても相手にすらされなくて、いつも寂しい気持ちを抱えていました。そのうち自分に自信がなくなって、何をしても上手くいかなくなったんです」  向かい合って、静かに語り合う。下半身を結合したままという変な体勢だったけど、繋がっているお蔭からか、妙に落ち着いて話すことができた。 (――不思議だな。いつもだったら過去の陰気な自分の姿を聞いて、嫌われるかもしれないという恐れがあって、話すことを躊躇っていたのに、今は素直に話すことができる) 「確かに出逢った頃のお前は、どこか腐ったところがあったな。キャバ嬢に暴力を振るわれて、涙を流していたっけ」 「えっ!?」 「ドМなお前が、自分を痛めつけるご主人様がいなくなると焦って、夢の番人である俺の腰に縋って、めそめそ泣いていたんだ。悪夢の原因であるキャバ嬢を消さないでくれって懇願されたが、無視して消し去ってやった」  ひと仕事を終えた、爽快感を表すような表情を目の当たりにして、ものすごく恥ずかしくなってしまった。 「そっ、その節はお世話になりました……。一言付け加えると、そこまでドМじゃないです」 「いやいやドМだろ。手首をキツく縛っただけで、アソコを隆起させたくせに」 「違っ! あれは健吾さんのその姿が魅力的だったからで、縛られたからじゃないですっ」  頬がどんどん赤くなるのが分かり、どうにも視線を合わせられない。

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