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第15話
※如月響視点
今日はいつもより早めに授業が終わり、生徒会の集まりはないからそのまま帰るだけだ。
生徒会長とはいえちゃんと授業にはほとんど出席している。
大型の学校行事がある時は放課後の生徒会の仕事だけだと間に合わないから仕方なく休みがちになるが基本は真面目にやっている。
生徒代表の生徒会なのに休んでばかりいたら生徒達にも示しがつかないからな。
生徒会だからと優遇されてる事なんてない、所詮はただの生徒だからな。
…でも周りの奴らは俺を通して俺の家柄を見ている。
もう慣れたから今は何とも思わないが、俺を特別視している奴は少なくない。
家も俺の一部だし、将来は継ぐし…別に家柄を見ても構わないが俺は特別な奴なんかじゃない。
俺より悦の方が複雑だから同情するが、悦は心配されるのが嫌いだから何も言わない。
悦は授業には出るがほとんど寝ているからサボっているのと変わらない。
席が隣だから頭を叩きいつも起こしているがそれでも起きない時があるから困る。
文句を言いながら再び寝る悦にため息が出て二度は起こさない。
生徒会には行かないが仕事はあるからたまには寮の部屋で仕事をしようと悦と話ながら寮に向かった。
「夕飯どうするか」
「あー、仕事してると忘れがちになるからなぁ…響なんか買ってきてよ」
「分かった」
「この前みたいに栄養ドリンクの詰め合わせとか持ってきたら全部仕事響に押し付けるからね!」
栄養ドリンクのなにが悪いんだ?栄養ではないのか?
悦は肉が良いと俺に注文して自分の部屋に向かった。
今日は悦の部屋で仕事をする事にしていて俺も買い物が終わったら悦の部屋に向かう。
新入生歓迎会が近付いているからな、早く案を先生に持っていかないと仕事が進まない。
食堂でテイクアウトも出来るが、コンビニにしよう…悦は肉と言っていたが俺は栄養ドリンクで十分だからな。
そう思って歩いていたらふと甘い匂いが何処からかした。
近くで誰かがデザートでも食べているのか?と周りを見渡す。
すると小さくうずくまり少し様子が可笑しい人影が見えた。
あれは確か……えーっと、どっかで会った誰かだ。
しかしあの匂いは…Ωの匂いではなかったのか?
近付くΩは皆ヒートしていたからよく嗅いでいた、間違いない。
どうしてαからΩの匂いなんて………もしかしてアイツ…
そう思っていたら誰かが近付く話し声が聞こえた。
考えてる暇はない、とにかく困っているなら助けるのも生徒会長の務めだ。
俺はそいつの腕を掴んで近くの倉庫にそいつを押し込んだ。
小さく息を吐く…ずっと溜めていたのか、少し強いな…あまりヒートの匂いが効かない俺でさえちょっとヤバい。
あまり顔には出ないがヒートに包まれながらそんな事を考えていた。
しかし何故Ωがここにいる?周りを騙せても学園までは無理だろう、αである書類を提示する事は学園で義務付けられている。
ならば学園公認か、だったら俺がなにかいう事はないな。
それよりも早くヒートを止めないとヤバいかもしれない。
倉庫の外が騒がしい、きっとヒートのΩを探しているのだろう。
しかしこのΩは怯えるばかりで全然ヒートを抑えようとしていない。
一瞬番を探しているのかと思ったが、それだったらこんな風にはならないか。
とりあえずやり方を教えて誰かがいたらやりづらいだろうと俺は外に出た。
「あっ、響様!こちらでΩのヒートの匂いがしたと思うんですが…」
「…いるわけないだろ」
「しっ、失礼しました!」
いつもより声を低くして言うと、慌てて走り去っていき背中を眺める。
早く匂いが消えないものか、いつまでもここにいたら不自然だ。
そしてどのくらい待っていただろうか、恐る恐る倉庫のドアが開いた。
やっと匂いが落ち着いたなとΩ生徒の方を振り向いて驚いた。
目元が赤くなっていた、ずっと泣いていたのか?
……そんなに激しくしたのか、ヒートはよく分からないが大変そうだな。
またヒート騒ぎになったら困るから部屋の前まで一緒に向かう。
悦には少し待ってもらおう、いつも生徒会の集まりの時サボるからたまにはいいだろう。
部屋に近付いた時にΩ生徒が話をしたいと言ってきた。
まぁ少しくらいならいいだろうと思いお邪魔させてもらう事になった。
実は悦以外の部屋に入るのは初めてだ、皆遠回しに見るだけで仲が良い友人は悦しかいない。
ソファーに座り、Ω生徒といろいろな話をした。
結局何故αの学園にいるのか分からないが、言いたくないなら無理に聞く話でもないだろう。
話が終わり部屋から出てズボンのポケットからスマホを取り出す。
さっき確認した時悦からの着信があったが無視していた。
そういえばあれから結構時間が経ってしまったな。
さっさとコンビニ行って悦が待つ部屋に戻るか。
悦がうるさそうだから甘いデザートでもあげれば大人しくなるだろうと考えながら歩き出した足を止める。
「あ、名前聞くの忘れた」
Ω生徒のままだといろいろと嫌だろうな、まぁいいか…
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