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第17話

今日はたまたま会ったけど、もうお礼は言ったし…普通の生徒同様生徒会には近付かない方が安全だ。 教室に戻るとまだ譲は帰っていなくて、昼休みの時間のんびりだらだらと過ごしていた。 ふと窓から裏庭が見えた、下を覗くと響先輩と副会長ともう一人知らない人がいた。 金髪のロングヘアーで西洋の王子の格好をしている……変な人? 会話はここからじゃ聞こえないが副会長が金髪の人になにか言っている。 ちょっと怒ってる?あの人は生徒会の誰かなのだろうか…身内って言ってたし、でも響先輩は関係なさそうだったな。 「なーに見てんの!」 「うわっ!!」 いきなり肩に腕を回され覗き込まれたから幽霊を見たような反応をしてしまった。 譲は気配を消すのが上手いよな、本当にやめてほしい。 謝る譲を許して再び窓の向こう側を見るが、もう誰もそこにはいなかった。 俺はさっきそこに生徒会長と副会長と金髪の変な格好の人を見たって言ったら何故か譲は微妙な顔をしていた。 どうしたんだ?この前響先輩と副会長を見て憧れの眼差しを向けてたのに… 譲は誰もいなくなった裏庭を眺めてぼそりと呟いた。 「………金髪の変な人?」 「えっ、あ…あぁ」 「風紀委員長じゃないの?それ…」 風紀委員長?一度も見た事がないがあの人がそうなのか? 風紀委員長なのに何故学校指定の制服じゃないんだ? なんか風紀委員長とは思えなかったが実際に見た譲がそう言うならそうなのだろう。 嫌われ者の風紀委員長……見た目が派手なだけで特に何も思わなかった。 譲の話では見た目ではないって言ってたし、風紀委員長が話したところを見ていないからだろう。 譲は深刻な顔で席に座り、俺も譲の向かいの席に座る。 「俺、部活の先輩から変な噂聞いたんだよ」 「……噂?」 「風紀委員長の噂」 本人も口にするのに勇気がいるのか何度も深呼吸していた。 それほどの噂があの風紀委員長にあるのか、もしかしてそれが嫌われるようになった直接の原因なのかもしれない。 Ωならまだしもαがαを嫌うなんてよほどの事だろう。 顔を近付けて譲から内緒話のように小声で聞かされた言葉。 それは俺にとってただの噂であってほしいと願わずにはいられないほど身の毛もよだつものだった。 決して他人事ではない風紀委員長の秘密を知ってしまったような気がした。 「風紀委員長って、Ω狩りをしてるって噂があるんだよ」 「え…なんだよそれ」 「詳しくは噂だからあやふやなんだけど、風紀委員長って気持ち悪いけどあの顔だろ?しかも名門華族出身だから黙っていればΩが寄ってくるんだよ」 「………」 「だからΩに性処理させてるって噂、しかも誰にも取られたくないからってうなじを噛んで妊娠させて、使い物にならなくなったら捨てるんだってさ」 なんだそれ……Ωを何だと思っているのか?そんなゲス野郎がいるのか? 華族だから証拠隠滅しているらしく、Ωに厳しい世の中はΩの話なんて聞かないだろう。 実際見たと言う人から見ていない人に渡りまくった噂だから真実はどうか分からないそうだ。 でももし本当だったのなら、もし俺がΩだってバレたらヤバいだろ。 譲が俺が顔を青くした事を心配して顔を覗き込んできた。 笑って誤魔化したが顔が少し引きつっているかもしれない。 「こんな話、胸糞悪いよな…悪い」 「……だい、じょうぶ」 「そうだ!学園の近くに公園あるの知ってる?毎週土曜日にオープンカーのクレープ屋さんが来てるって聞いたんだけど、気分転換に行ってきたら?」 「俺は部活だから行けないけど感想聞かせてよ」と続けて言った。 クレープか、いいかもしれないな…嫌な事はすぐ忘れるにかぎる。 俺はなるべく何も考えないようにして午後の授業を受けた。 放課後になり部活に行く者、寮に帰る者、学園の外に遊びに行く者それぞれだった。 俺はクレープ屋さんが来てると言われた公園に向かって学園の門を出た。 今日はΩ集団はいないんだな、もしかしたら早めに響先輩と副会長が通っていったから解散したのか?まぁ俺には関係ないか。 そして学園に来る時に見かけた公園を思い出し10分ほど歩いた先に公園があった。 しかし凄い賑やかだな、そんなに美味しいクレープなのか? 期待も高まりわくわくしながら俺も公園の中に入る。 遊具には近所の子供だろうか、きゃっきゃと遊んでいるのが見えた。 そして公園の端にいろんな制服に身を包んだ群れがあった。 あ、同じ学校の人が何人かいる…Ωが若干多いからかそわそわしているように見える。 男女関係なくいる群れでクレープ屋さんが見えない。 固まっていて列じゃないみたいだけど、並んでるのか? 割り込んじゃいけないけどよく分からずただ少し離れたところから眺めてるしかなかった。 待ってる間にクレープ屋さんが行かないかそれだけが心配だった。 「ねぇあの人超カッコいい!」 「月岡学園の制服だからαだよね、番はいるのかな?」 そんなΩ達のキャーキャー黄色い声の話し声が聞こえた。 カッコいい人?皆クレープ食べに来たんじゃないのか? 群れの中心人物が動き出したのか周りも動き出し、その姿が見えた。 笑顔がとても似合うその人は話しかけてきた全員に笑顔で話していた。 手にはクレープ屋さんのマスコットキャラクターなのかクマの可愛いイラストがプリントされた紙に包まれたイチゴと生クリームが食欲をそそるクレープを持っていた。 そういえばこの人、甘いものが好きなんだっけと思い出した。 「悦様!トッピングの種類が増えたんですよ!」 「へぇ、今度乗せてもらおうかな」 「悦様のそのクレープ、新作のイチゴレアチーズですか!?」 「そうそう!美味しいからオススメ!」 「は、はいぃ〜!!」 何だか楽しそうだな、副会長の周りにいる人は皆目からハートが飛んでいるように思えた。 いつも通ってるからクレープ屋さんからも顔馴染みみたいでサービスしてもらっていた。 副会長と一緒に皆移動するからクレープ屋さんに人が居なくなった。 良かった、これでゆっくり頼める…クレープ屋さんの前に立つと甘い匂いがする。 いろんな種類がありどうしようか悩んでいたら、ふとさっきの会話を思い出した。 俺はメニューから顔を上げて店員のおじさんに伝える。 「イチゴレアチーズにトッピングのダブルチョコで!」 デロ甘なクレープになったがせっかく譲から教えてもらったし、クレープを堪能しようと思った。 クレープを受け取り、寮で食べるのもいいけど公園のベンチもいいよなぁとうろうろと見渡す。 副会長達はもういないみたいだ、子供の声しかしない。 俺は子供達から少し離れたベンチに座りクレープを一口かじる。 ふわふわの生地に甘酸っぱいイチゴとレアチーズが絶妙だ。 チョコも甘いのとほろ苦いダブルの味で美味しい。 俺も常連になろうかな?とそんな事を考えていた。 「美味しそうだね、俺もトッピング付ければよかったな〜」 「はい!オススメで……!!!???」 「面白い顔〜」 いきなり真横に副会長がいたら誰でも驚くと思う。 頬を指で突っついている副会長にどうすれば良いか戸惑う。 昼休みぶりと挨拶すればいいのか逃げるべきか。 ……いや、さすがに逃げたら失礼だから挨拶して立ち去ろう。 俺が口を開いたところで副会長が横から居なくなっていた。 あれ?どこに行った?と周りを見渡すとクレープ屋さんから歩いて来た副会長がいた。 「やっぱり俺も食べたくなって買ってきちゃった!」 「早っ!?」 「百面相で忙しくて気付かなかっただけじゃない?」

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