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第4話

ふわり、ふわり。 ふと気がつくと、 やわらかく頭を撫でられているのがわかった。 優しく、労わるように触れてくるその手がすごく心地よくて、自分からその手にすりよってみる。 するとその手は、一瞬動きを止める。 けれど、すぐに何もなかったかのように動きを再開した。 ……きもちいい。 しあわせってこんな感じなんだろうなぁ。 でも、珍しい。寝ている時に、しあわせな夢なんて、殆ど見たことないのに。 こんなにしあわせな夢なら、覚めたくないなぁ… 「寝てる時は、かわいいもんだな」 フッ、と頭上で笑う気配。 ……………? なんだか、その声に聞き覚えがある気がして、うっすらと目を開く。 視界に飛び込んできたのは、やさしいミルクティー色と。 「おっ、起きたか?」 晴れ渡った空みたいな、綺麗なあお。 「…………!!!」 飛び起きた。 これ、夢じゃない…!? ぼく、たしか放課後に呼び出されて、 それで先生の、目を見て、 それで こえをきかれ「はい、ストップ」 ーーーおおきくて、あたたかい手で、視界をふさがれて。 そこで初めて、呼吸が荒くなっていたことに気付く。 「なに考えんのかしらねぇけど、とりあえず落ち着け」 そういうと、再び背中をゆっくりと撫でられた。 デジャブ。 …でも、やっぱりその手は優しくて、それからあたたかくて。 そして、前と同じ、優しいお花みたいな香り。 …………おちつく。 「………よし、落ち着いたか」 そういうと、先生は僕から離れていった。 …ちょっと、寂しい。なんて、今まで感じたことのない感情に戸惑う。 やっぱり、先生となら、一緒にいても息苦しくない。 むしろ、息苦しさが和らぐ。 ……これって、どういうことなんだろ? 答えが欲しくて、じぃっと先生を見てみる。 まぁ、見てるだけで伝わるわけないのだけれど。 「……?どうかしたか?」 「………」 「…………ちょっとまってろ」 そういうと、先生はゴソゴソと周囲を漁り始めた。 「………?」 なに、探してるんだろ? もともとは居眠りで呼び出されたわけだし、課題とかわたされるのかなぁ…? おおかったらいやだな。なんて思いながらぼんやり窓の外を眺める。 ここにくる前は青かったはずの空は、もう茜色に染まっていた。 あれ、そういえばいまって、何時なんだろ…。 時計を見ようと室内に視線を戻す。 すると、僕の目の前に一冊のノートが差し出された。 ……課題用かな? 「………?」 説明がほしくて、先生を見つめる。 けれど、落とされたのは予想もしていなかったことば。 「なぁ、綺羅。俺と、交換ノートしようぜ。」 ーーーーみつめあった、先生の瞳は、夕方でもやっぱりお昼の青空みたいにきらめいていた。

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