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第19話
「着いたぞ」
その言葉に、伏せていた顔をあげる。
そっと、ソファに降ろされた。
「屋上の方がいいかと思ったけど、まだお前病みあがりだから、今日はこっちで我慢な。外、さみぃし」
そういって、ソファに置いてあった毛布をふわりと掛けてくれる。
……あたたかいし、先生の香りがして落ち着く。
………でも、先生は、寒くないのかな?
周りをみても、毛布はこのひとつしかなくて。
ちらり、と先生を見る。
「ん?どうした?」
パシパシと自分の横を叩くと、すんなり隣に来てくれる。
「なんかあったか?」
そう、優しく問いかけてくれる先生に、毛布をかけた。
すこし驚いた顔をする先生。
……?
何か、おかしなことしたかな?
好きなひととは、もの、半分こするものじゃないの?
教室とか、本とかみた限りでは、そうなのかなって思っていたんだけど。
固まっている先生をみると、不安になってしたう。
そしたら、視界の端にうつったのは、交換ノートで。
あ、そっか。
ここに、置きっぱなしだったんだ……。
おもむろに手を伸ばして、そばに置いてあったペンも借りる。
『ひとつしかないものは、好きなひととは、半分こするものじゃないんですか?』
まだほとんどまっさらなノートに、そうかいて、先生の方に向ける。
それを見た先生は、
「………!だから、お前は……!」
そう言って、髪の毛をグシャリとかき乱した。
……かおが、あかい?きがする。
そのまま、乱雑にペンをとって、何やら書き込むと、ずいっと目の前に差し出される。
『あってるよ。ありがとう』
視界に広がるそれに、ふにゃり、表情がゆるんだ。
そしたら、急に視界が暗くなって。
「あーーーー、もう、ほんとに……」
先生が、何かをぼそりと呟く。
その吐息を間近で感じて、ぎゅうっと抱きしめられているんだと、気付いた。
さっき、あんなに来たいって思った、先生の腕の中。
ーーーあたたかくて、安心できて、幸せで。
先生に、自分から、ぴとりとくっつく。
先生は、優しく背中を撫でてくれた。
そうして、静かで穏やかな時間が流れて。
………きもちいい。
寝ちゃいそう。
先生の体温と、背中を撫でる手にうとうとしかけていたとき。
「……本題に戻るけど。お前、今日早速囲まれてたみたいだけど、大丈夫だったか? 」
そう、尋ねられた。
ぼんやりする頭で、コクリと頷く。
「そうか。まぁ、あのクラス良いやつ多いんだけど、皆元気だからな…。元気すぎて、疲れたんじゃないかと思って」
……すごい、せんせい、なんでもおみとおし?
「昼休みくらいは、ゆっくりした方が良いんじゃないかと思ったんだが、もし邪魔してたら悪いな」
とん、とんとあやすみたいに、背中を撫でる手は止まらない。
……話の途中なのに、ねちゃいそう…
意識を保とうと、どうにか首をふるふると振る。
………ねむ…。
「ほわいとぼーど、うれ、しかった、けど、やっぱり……せんせ、といるの、が、いちばんすき……」
背中を撫でていた手が、ピタリと止まった気がしたけれど。
……もうだめ。
やっぱり、すこし疲れていてしまったみたいで。
安心できる、先生の気配に。
ぼくの意識は、落ちていった。
「は?
えっ?
えっ…………?
喋った?え、綺羅?って寝てる…?!」
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