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第25話
「ほら、たべろ」
あれから、一緒に先生のお家に帰ってきて。
今は、晩ごはんの時間。
目の前に広げられた豪華なお皿の数々に、思わず目を輝かせてしまう。
………すごい。
どの料理も出来たてで、湯気を立てている。
それをぼんやりと眺めた。
……出来たてのご飯なんて、いつぶりだろ。
給食以来かな。
…あれをできたてというのかは微妙だけど。
『いただきます』
やっぱり声にはならないそれに、けれど、先生の目は優しげに細められる。
「好きなだけ、食え」
そう言って、自分も食べ始めた。
ぼくは、あまり食べる方ではい。
それに、今日はお昼ご飯を食べたというのもあって、正直あまりお腹は減っていない。
それでも。
先生が作ってくれた料理だと思うと。
先生が食べているものなのだと思うと。
自然と、"食べたい"と、そう思った。
ぱくり、ひと口食べて。
へにょ、口角が勝手に緩んでしまう。
「はは、うれしそーだな、よかった」
その声にハッと我に帰る。
前に視線を向ければ、とろけそうなくらい、優しい笑顔で僕を見る先生。
恥ずかしい……!
先生といると、気付けば表情がゆるんでしまっている。
…でも。
ちらり。先生を見上げる。
「ん?」
優しく、あまく、笑うその顔を見て。
ーーーーそれでもいいかな、って、そう思えた。
そのままもぐもぐと食べ進める、けれど。
「………」
ほんの数口で、お腹がいっぱいになってしまう。
みんながどのくらい食べるのか、よく知らない僕でも、これが少なすぎるってことくらいは、わかる。
せっかく作ってくれた先生に、もうしわけなくて。
ぱくり、
どうにか食べ進めようとするけれど。
………お腹がいっぱいで、くるしい。
「綺羅、腹一杯なのか?」
その声に、ビクリ、肩が震えた。
どうにか、ふるふると首を振る。
まだ、食べれる。食べたい。
けれど。
「……無理すんな」
先生は、そういうとひょいっと僕からお箸をとってしまう。
全然減っていない料理が、申し訳なくて。
こんなことばっかりだな、って悲しくなった。
「気にしなくていいから。でも、お前、ほんとに軽すぎだから、ちょっとずつ食べれるようにしてくぞ」
そう言って、先生はクシャリと僕の頭をかき混ぜる。
でも、せっかくつくってくれたのに。
じわり、視界が滲む。
……じぶんが、なさけなくて。
けれど。
「本当に、気にしなくていいから。可愛い笑顔が見れたからじゅーぶん」
そう言って、僕の頭をもう一度かき混ぜてから。
先生の笑顔が甘みをますから。
ほっぺたが、ぼっ、と熱くなるのがわかる。
……は、はずかしい……!
嬉しさと、はずかしさが、頭の中でぐちゃぐちゃになって、別の意味で泣いてしまいそう。
そんな僕を、先生は優しい目で見つめていた。
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