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第1―10話

ずーる、ずーる、ずーる。 小野寺は高野に肩を貸し歩いていた。 だが額に汗して必死に歩いているのは小野寺だけで、高野はぐったりと小野寺に寄り掛かり引き摺られているだけだ。 「高野さん、頑張って歩いて! もうちょっとでベッドです!」 「…ソファでいい」 「ソファの上は洗濯物だらけです。 さっき見たでしょう? ほら、頑張って!」 「…んー」 結局高野はあの後、日本酒の純米大吟醸を2本空けて潰れてしまった。 小野寺はそれでも用心深くテーブルに俯せになる高野を30分観察してから立ち上がった。 「高野さん、寝るならベッドに行きましょう」と。 やっとベッドに辿り着き、高野をベッドに転がす。 「おのでらー」 「はいはい、ここにいますよ」 高野にすっぽり抱きしめられる。 まさか…ここまできて起きるとか無いよな… 小野寺は少しだけドキドキしたが、高野は数分もしない内に、寝息を立て始めた。 小野寺は高野の腕から、そーっと抜け出す。 掛け布団を首まですっぽりかけてやり、自分は予め用意しておいた毛布を持って寝室の照明を落とし、部屋を後にする。 食べ散らかされたダイニングテーブルを見て、小野寺は勝利を噛み締める。 勝った…!! 平和なクリスマスをもぎ取った!! 高野とクリスマス・イヴを過ごすのは嫌じゃない。 なんたって高野の誕生日でもある訳だし。 ただ、去年のカーセックスのような目には絶対遭いたくない!! 去年カーセックスなら、今年バージョンアップしたら…何されるんだ!?という恐怖もある。 そこで小野寺は考えた。 高野さんの好物を手作りして感動させ酒を飲ませる。 クリスマスプレゼント兼誕生日プレゼントを渡して感動させ酒を飲ませる。 そして酔い潰す。 その為に、高野が風邪を引いた時に嫌がらせのようにリクエストされた『仔羊のローストトマト煮込み』と『スモークサーモンとホタテのガトー仕立て』を10月の初めから特訓していたのだ。 プレゼントだって、その頃から選びに選び抜いた。 そして、完全勝利!! 小野寺はダイニングテーブルを鼻歌混じりで片付け、キッチンの後片付けは明日に回し、さっとシャワーを浴びた。 それからソファの洗濯物を部屋の隅に移動し、ソファに横になるとクッションに頭を乗せ毛布を被り目を閉じる。 小野寺は平和なクリスマスを満喫しながら、眠りについた。 「やっ…やだぁ…も、やあ…っ」 弄り倒されて赤く腫れぼったくなった乳首、キスマークだらけの裸の上半身を捻って逃れようとするが、羽鳥は許さない。 吉野の瞳は涙で霞んでいた。 もうデニムの前がきつくて、下着を濡らしているのが分かる。 羽鳥のしつこい愛撫に身体中が敏感になって、羽鳥の吐息にさえ指先まで甘く痺れてしまう。 それなのに。 そんな状態なのに、羽鳥は意地悪く膝で股間を押してくる。 「ああっ」 吉野の身体が跳ね、身体が上擦るのを、羽鳥の大きな手で細い腰を捕まれダイレクトに刺激が伝わる。 「いや…もう…いやぁ…」 吉野の瞳から涙が零れて落ちる。 その涙を羽鳥の唇が吸う。 「もう、イきたい?」 羽鳥の問いかけにコクリと頷いてしまう。 「車の中だぞ?いいのか?」 「だって…」 吉野の真っ赤な頬に涙がポロポロと零れる。 「分かったよ。イかせてやる」 羽鳥は仕方が無いな、という風に言うと、吉野の足からデニムと下着を脱がす。 ぷるんと薄桃色の吉野自身が顔を出す。 吉野は窮屈さから解放されてホッとしていると、我が目を疑い目を見開いた。 羽鳥が歯でゴムの包装を破り、素早く吉野の雄に被したのだ。 そしてスーツ姿の羽鳥はスラックスの前を寛げ、凶悪に猛る巨大な自身にもゴムを被せた。 「え…?え?え?」 吉野が羽鳥を瞬きも出来ずに見つめていると、今度は何処からかローションを取り出し、手に刷り込み出した。 それから吉野の太股の裏をぐっと押し倒すと、「自分で支えて」と言われ膝裏を持たされる。 目の前に自分自身が見える体勢に吉野が真っ赤になっていると、後孔に一本指が侵入する。 「ひゃっ…ああっ…」 羽鳥は吉野の感じる場所を責めながら、いつもより性急に指を動かす。 「やっ…だめっ…出る…ッ」 吉野の身体がビクビクと震えると、羽鳥の片手が吉野の雄の根本をぐっと押さえる。 「やだぁっ…離して…!」 「もう少し我慢しろ」 「やだ…や…ああんっ」 中を探る指が一気に三本に増やされる。 もう吉野は自分の足を支え、喘ぐことしか出来ない。 そうして何分経ったのかも分からずにいると、何の前触れも無く指が抜かれる。 吉野が息を吐く間も無く、熱く硬い塊に蕾を一気に貫かれる。 「アアーッ」 吉野の全身が痙攣したように震える。 吉野の雄もプルプルと震えているが、根本を掴まれている為、放出出来ない。 苦しい位の快感が吉野の全身を駆け巡る。 「トリっ…やあっ…許してっ…」 狭い車内で180近い長身の羽鳥に覆い被され、羽鳥自身が吉野の最奥を打ち付ける。 「トリっ…おねが…」 「千秋、好きだ」 「ト、リ…」 「好きだ。好きだよ、千秋」 荒々しい羽鳥の吐息。 自分を呼ぶ掠れた声。 激しい抽挿。 イきたいのにイかせて貰えなくて、身体中の血液が沸騰しそうな自分。 なぜ羽鳥がゴムとローションを用意していたのか、とか。 バックシートにいつの間にか敷かれていたブランケットはどうしたのか、とか。 そんな事には微塵も気付かずに、吉野はひとり真っ裸でただ羽鳥にしがみつき、嬌声を上げ、イかせてと泣きながら懇願するのだった。 「スッゲー!! 木佐さん、あんな遠くまで見えますよ!」 「ホントだ!綺麗だよな~!!」 粉雪の降る中、サンタクロースが二人並んで柵に手をかけ、乗り出すように夜景を見ている。 木佐の首には雪名からのクリスマスプレゼントのチョーカー。 雪名の耳には木佐からのクリスマスプレゼントのピアス。 二人は夜景を見ては歓声を上げ、笑い合い、触れるようなキスを繰り返す。 「木佐さん、肩車しましょうか? もっと遠くまで見えるんじゃないっすか?」 「…馬鹿か!」 そんなくだらないやりとりまでもが、甘く二人を笑顔にする。 そして見つめ合い、何度目かのキスをしたその時、 「あー!!おっきいサンタさんと小さいサンタさんがキスしてるー!!」 と女の子のはしゃいだ声が響いた。

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