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第6話

「やあ、美月。約束どおり、誘いにきたぞ」  中庭の木陰でぼんやりしていた美月は、さっそくの誘いにクククと喉を鳴らした。 「なんだ」 「いや。まさか昨日の今日で誘われるとはね」 「不都合でもあったか」 「いや、ないよ」 「そうか」  差し出された手を取って立ち上がり、繋いだ手はそのままで祐樹の部屋に連れていかれる。 「いまのところ、あの人はきていないみたいだからな。ほかのアルファは美月を誘わないだろう?」 「祐樹は部屋にひっこんでいてかまわないのか? アルファに声をかけられたいんじゃないのか」 「いつも部屋で遊んでいるわけじゃないし、指名があれば誰かが呼びに来るさ」 「ふうん?」 「なんだか、納得できないって顔だな」 「昨日は、どうあってもいいアルファに見つけられたいって感じがしたからだよ」  ピタリと立ち止まった祐樹が、体ごと美月に向いた。 「気のせいじゃなく、そのとおりだ。僕たちオメガはいいアルファに見つけられて、引き取られるほかはない」 「はっきりと言い切るんだな。教官になる道だって……この館に引き取られないオメガは、ベータと暮らすことだってあるんだろう?」  素朴な疑問に祐樹は奇妙に顔をゆがめた。 「どうした」 「美月はどうか知らないけどさ。すくなくとも僕は、そうじゃない人生は暗くてつらいものだって思ってる」 「祐樹」 「その話は、ここでは」  声を潜めて左右に目を向ける祐樹に、美月はわかったと目顔で示した。そしてまた、手を引かれて祐樹の部屋を目指す。 「ここが、僕の部屋だ」  どうぞと開かれたドアの向こうでは、五人のオメガがテーブルを囲んで談笑していた。 「おう、ただいま」 「おかえり、祐樹」 「ほんとに美月さんと友達だったんだ」  わあっとオメガたちに取り囲まれて、美月はとまどった。 「あ、ええと」 「そんないきなり近づいたら、美月がビックリするだろう。なあ、美月」 「ええと……ああ、まあ、そう……かな」 「ほらほら。とにかく座ろうぜ」  ソファに座らされた美月の前に、カップが置かれてお茶が注がれる。 「どうぞ」 「ありがとう」  ウキウキした声で少女のような青年に勧められ、美月はそっとカップを持ち上げた。誰もが美月を興味津々の目で見ている。 (見世物になった気分だな)  苦笑しながら口をつけた。 「おいしい?」 「うん。おいしいよ」  ワッとオメガたちが喜色をはじけさせる。 「美月さんも、僕たちとおなじものを飲むんだねぇ」 「当たり前だろう。食事はいっしょなんだから」 「でもなんか、特別な物しか食べないイメージあった」 「それ、わかるかも。なんか現実味がないんだよな、美月さんって」  ワイワイとにぎやかな彼等の様子に、美月はどう反応をすればいいのかわからなかった。 「はいはい。おまえらがそんなふうに扱ってるから、美月が孤立するんだろ。美月だって僕たちと変わりない、この館に連れてこられたオメガなんだ。ちょっと在籍期間が長いだけの、とびぬけて美形なだけなんだから。特別でもなんでもないんだぞ」 「でも、祐樹。在籍期間が長いって、すごいことじゃない?」 「それに、とびぬけて美形って、もうそれ特別ってことじゃん」  アハハと明るい笑いが部屋に満ちて、美月はなつかしいような居心地が悪いような、不思議な感覚に包まれた。 「美月も、そんなに緊張しなくても……って言っても、むずかしいか。人見知りだもんな」 「人見知りでは……ない、と思う」  自信なさげに答えると、そうかと首をかしげられた。 「じゃあ、人間不信か?」 「どうしてそういう評価になったんだ」 「自分から人の輪に入らないし、誤解されたままでいるからだよ」 「誤解?」 「そう。べつに美月は特別扱いされたいわけではないし、優越感にひたりたいタイプでもなくて、流されてるだけなんだから」 「流されてる、だけ」 「そうそう。周囲に勝手な評価をされて、それでいいやって放置してるんだろ。流されてるようなもんじゃないか。それとも昔は、違うって言ってみたりしたのか?」 「いや、とくには」 「してないんだろ。だったら、そういうことで」  納得できない顔をした美月の肩に、祐樹の腕がまわされた。耳元に唇を寄せられる。 「細かいことは、あとで。そうしておいたほうが、こいつらに伝わりやすいから。遠巻きにされるよりはマシだろう」 「それは、まあ」 「じゃあ、そういうことで」  ニイッと歯を見せた祐樹が、オメガたちに声をかける。 「だから遠慮せずに、美月に声をかければいいんだよ。人付き合いが苦手なやつだから、あんまりグイグイいかない感じで、そうっとな」 「野良猫を手なずけるみたいに?」 「野良猫かぁ。それはいいな! うん、そんな感じだ」 「野良猫」  まさかの例えに唖然とする美月に、六つの笑顔が向けられた。 「それじゃあ、まずはお菓子を食べて、くつろいでもらいましょう」 「好きなお菓子はありますか」 「僕はチョコレートが好きなんだ」 「僕はフィナンシェ。美月さんは?」  親しみのこもったまなざしに、距離感や立ち位置を定められない美月は視線で祐樹に助けを求めた。 「そんなに緊張しなくてもいいって。なんだ。談話室では主みたいな顔してくつろいでんのに、ここではそんな緊張するのか」 「ぬ、主……みたいに見えていたのか」  うんうんとオメガたちに肯定されて、美月は片頬をぎこちなく持ち上げた。 (近寄りがたいと思われていた上に、そんな印象を与えていたのなら、特別視をされて当然だな) 「そんなに緊張をしているんなら、しゃべらなくてもいいコミュニケーションをしようか」 「え」 「遊ぼうぜ。ここ特有の、オメガ同士のじゃれあいだ」  耳裏を撫でられて、美月はゾクリと背筋を震わせた。祐樹の目が艶やかに濡れている。さきほどまでは夏の陽光に似た明るい輝きを放っていた瞳が、妖しげに揺らめいている。その変化に、美月の肌がざわめいた。 「いやか?」  答える代わりに、美月は祐樹の首に腕を回して唇を重ねた。 「ふたりだけで遊ぶの?」  それを見たオメガのひとりが不満を漏らす。 「君たちも、いっしょに」  美月が誘うと、わあいと五人のオメガたちが美月と祐樹のそばにくる。 「テーブルが、邪魔だな」  天井に向かって放たれた祐樹の声に、護衛のベータたちが反応してテーブルを部屋の端に移動させた。広く空けられた床に、オメガたちの服が脱ぎ捨てられる。整えられた肢体が絡まり、キスの応酬がはじまった。 「んっ、ふ……ふっ、んぅっ、う……は、ぁ」 「祐樹、僕も美月としたい」 「僕も」 「がっつくなよ。ゆっくり、大切に扱ってやんないと、怖がられるぞ」  クスクス笑う祐樹の息を頬に受けつつ、美月はそれぞれに愛らしくうつくしいオメガたちとキスを交わした。指で輪郭を確かめられて、舌で肌を味わわれる。 「は、ぁ……んっ、ぁ、あ」  誰もが美月に興味を示し、知ろうとした。  五人のオメガと祐樹に組み敷かれる形になった美月は、体のあちこちに与えられる愛撫で薄桃に染まる。 「んっ、ぁ、んううっ」  キュウッと脚の付け根に吸いつかれ、美月が切ない声を上げると愛撫の激しさが増した。 「美月さんの弱いところ、みつけた」 「ほかにもあるかも」 「ここは、どうかな」 「ふぁっ、あ……っ、ん、ぅう……は、ぁあ……っあ」  脇腹に、胸の先に、太腿に、足指に、うなじに、唇が這わされる。欲の中心には誰も触れずに、美月は熱を高められた。腕を泳がせて指をさまよわせ、祐樹の頭を掴んで引き寄せる。 「は、ぁ……ふっ、んぅ、んっ、ん」  唇を求めると舌を伸ばされた。呼気を重ねて祐樹の唇をむさぼりながら、全身を蹂躙される美月の欲熱がビクビクと痙攣し、先端から透明な液を漏らした。 「あはっ、美月さんの蜜だ」 「やったぁ。僕も舐めたい」  舌が伸ばされ、刺激のなかった箇所がくすぐられた。放つには緩くもどかしい刺激に、美月は甘く鼻を鳴らした。 「ふっ、はぅんっ、ぁ、ああ……あっ、んぅ、うっ、ふ」  淫靡な陶酔に包まれて、美月はうっとりと目を細めた。肌が粟立ち、ふわふわと宙に浮く。淡々とした愛撫だけが自分を支え、形作る刺激となって、美月はすべてを彼等にゆだねた。 「は、ぁあ……あ、んっ、ふ……ああ、あ、も……もう」  イカせて、とかすれた声で願えば、誰がするかと相談になった。 「ここは、やっぱり僕だろう」  得意顔で祐樹が名乗りを上げて、そうと決まると美月の陰茎は祐樹の口腔に包まれた。 「んはっ、ぁ、ああ……っ、ふ、ぅう」  離れた唇たちは美月の頬や腕、胸や腹に落ち着いた。美月は指に触れた肌をたぐって、誰のものかわからないまま陰茎を握り、それを扱いた。 「あ、ああ……美月さんが、僕を……してくれてる」 「ええっ、ずるい。僕もされたい」 「順番だよ。美月さんの手は、ふたつしかないんだから」  そんな声を聞きながら、美月は祐樹の口淫に声を上げた。 「あっ、は、ぁはっ、ふ……んぅうあぁああっ」  腰を突き出し精を放てば、筒内のものまで吸い上げられる。空っぽになるのではと思うほど強い吸引に、甘美なめまいを覚えた美月の手の中で、握っていた欲が爆ぜた。 「は、ぁん……ぅう」  はかない嬌声にほほえんで、美月は余韻に包まれた気だるい体を動かした。期待に彩られ、淫靡に熟れた顔が美月を取り囲んでいる。 「美月さん」  おずおずと体を寄せてきた相手に唇を寄せて、脚の間に手を伸ばす。 「あっ」  可憐な悲鳴を握りこみ、やわやわと愛撫するとうれしそうに顔をすり寄せられた。 「美月さん、僕も」 「うん」  もう片手で別の相手を愛撫しながら、祐樹に向けて口を開き、舌を伸ばした。 「次は、僕の番だ」 「いいのか?」 「遠慮をする必要なんて、どこにあるのかな。僕たちは対等――そうだろう」 「ああ、そうだ」  祐樹のそそり立ったものが美月の舌に乗せられる。丹念に周囲を食むと、熱っぽい息が落ちてきた。左右からは愛らしい喘ぎ声が耳奥に注がれて、美月は己の殻を崩してむき出しの獣になった。 「んっ、ふ……んむっ、ふ……はむっ、うんっ、んぅう」  喉奥にまで熱を呑み込み、たっぷりと味わっていると相手の液と自分の唾液が混ざり合った。飲み込みきれずに口の端から漏れたものを、誰かの舌が拭ってくれる。体とともに心も開いて愛撫を続け、祐樹の極まりの声に震えながら放たれたものを呑み込んだ。 「んっ、く……はぁ、あ……はぁ」 「美月」 「ぅん」  互いの精を飲んだ口を重ねて、相手の味と自分の味を確かめる。脚の間に誰かが潜って、美月の欲に食いついた。 「ふぁっ、あ……はぁ、んっ、うう」  位置を変え、立場を変えて身を擦りつけ、じゃれあって乱れる。この館では、相手をよりよく知るための遊びとして教えられる行為を、存分にたのしんだ美月は疲れ切って床に倒れた。そのまわりに、祐樹やほかの面々も転がった。 「は、ぁ」  甘く気だるい息を放てば、クスクスと笑いのさざめきが起きる。 「美月さんって、もっと怖い人かと思ってました」 「――え」 「あんまり人と交流しないっていうか、遊びに誘っても断られそうっていうか、そんなイメージを持ってたんですよ」 「僕も」 「いっしょいっしょ」  ねぇ、と印象を確認しあう彼等に苦笑して、美月は細く長く息を吐いた。 「それで、いまはどう思っているのかな」 「僕たちといっしょだなって思いました」 「触ってみたら、変わりないんだなぁって」 「ちゃんと僕たちにもしてくれたし」  うんうんと意識を共有しながら甘えられ、美月は照れくさくなった。視線を祐樹に向ければ、よかったなと表情で伝えられる。無言で「うん」と答えた美月は目を閉じた。 (財前さんに呼ばれたときとは、ぜんぜん違う)  行為自体はおなじでも、気持ちがまったく違っている。自由に、奔放に、自分たちの好きなようにたわむれる。誰かに監視されるでも、誰かを満足させるためでもなく、ただ自分がしたいようにする。そんなふうに、ほかのオメガと触れ合うのは久しぶりだ。 「たのしかった」  美月のつぶやきに、僕も僕もと声が重なる。 「喉が渇いたな」  祐樹が言えば、壁際に控えていたベータたちが動いた。事後の準備をしていたらしく、てきぱきと自分のオメガの体を拭い、ベッドに寝かせて汚れた床を磨いたり飲み物の準備をしたり、動かしたテーブルを元通りにする。  折り重なってベッドに寝ている美月たちは、それらをぼんやりながめながら、時々キスをしたり指を絡めたりして友好を深めた。 「準備が整いましたが」  秋定が言うと、祐樹が「うん」と身を起こす。 「さて。どうする?」 「僕、ソファに行きたい」 「僕はベッドで寝てていい?」 「僕はお腹空いたなぁ」 「僕は眠いぃ」 「美月は? どうしたい」 「僕は……祐樹は、どうするんだ」 「とりあえず、お茶を飲む」 「じゃあ、僕もそうするよ」  それぞれの発言を受けて、護衛のベータが手を伸ばす。祐樹が秋定の手を借りてテーブルに行ったので、美月も腕を伸ばして和真を呼んだ。抱き上げられて、祐樹の隣に下ろされる。 「はぁ」  淹れたての紅茶をすすり、ひと息ついた美月は唇でよろこびを噛みしめた。  そこからはとくに会話があるわけでなく、明るい気だるさが漂う空間でそれぞれ好き勝手にくつろぎ、ひとり、またひとりと自分の部屋へ帰っていった。  最後まで残った美月は、眠そうな顔でソファに身をあずけている祐樹の肩に頭を乗せた。 「ありがとう」 「うん?」 「久しぶりだ。こんなふうに、自由に過ごしたのは」 「それは、よかった」 「うん」 「あいつらから、美月は怖くないって話が広がって、特別視されなくなっていくと思うぞ」 「ありがたいな」 「すこしも惜しいとは思わないのか」 「思わないよ。望んで遠巻きにされていたわけじゃないからね。誰かが言っていたとおり、僕はほかのみんなと変わりない、ただのオメガだよ」 「館に誘われるくらいのオメガではあるけどな」 「祐樹はそこにこだわりがあるんだね」 「あるさ。大ありだ」 「昨日の話に通じている?」  コツンと額が重なった。 「うん」  沈黙が訪れる。祐樹の息を感じながら、美月は壁に並んでいる和真と秋定を見た。 「話しづらい?」 「そうじゃないけど……美月は知らないようだから、言ってもいいのかどうか迷ってる」 「館のことなら、たいていは知っているはずだけど」 「館の外の世界の話だ。――だけど、美月のほかにも知らない連中はいるから、それが悪いとか悪くないとか、無知だとかなんだとか、そういうことじゃないんだ」 「うん」 「知らなくてもいいことはある」 「祐樹の頭に浮かんでいることは、僕が知らなくてもいいことだって言いたいんだね」 「そうだ」 「言いたくない?」 「それとは、ちょっと違うな」 「じゃあ、なに」 「言いたいけど、教えたくない」 「言いたくないとおなじじゃないのか」 「違う」 「そう?」 「そうだ」 「ふうん」  美月はじっと祐樹の目の奥を見つめた。祐樹も視線を美月に合わせる。 「言ってもいいと判断したら、教えてくれると約束をしてくれるのなら、いまは聞かないでおくよ」 「ずいぶんと偉そうな言い方だな」 「そうかな?」 「そうだよ。まあでも……無理に聞こうとしないところは、やさしいのかもな」 「どっちだよ」 「どっちもだよ。どっちかに決めなくてもいいだろう」 「そうか……そうだね」 「そうだ」  鼻先をくっつけて、指を絡める。キスをして顔を離して、笑顔を交わした。 「声をかけてみてよかったな。嫌味がはじめだったけど」 「声をかけられてよかったよ。たとえ嫌味がはじめでも」  同時に吹き出して笑っていると、夕食の時間を知らせるベルが鳴った。 「ああ、食事の時間だ」 「行きたくないな。もっと美月と遊んでいたい」 「僕はもう疲れたよ」 「したいってことじゃない。こうして並んで座って、お茶を飲んだり話をしたり。そういう遊びってことだ」 「それはただ、いるだけじゃないのか」 「それがいいって関係は、きらいか?」  すこし考えてから、美月は首を振った。 「それはなんだか、家族みたいな感じがして……いいね」 「家族か! いいな、それ」  声を跳ね上げた祐樹は、その勢いで立ち上がった。引っ張り上げられ、美月も席を立つ。 「美月と俺は、いまから兄弟だ。そういうのは、どうだ」 「きょ、うだ……い?」 「そうだ。そういうのも、おもしろいだろう。友達じゃなく、兄弟になってしまえばいい。館に入って、アルファに引き取られるまでは家族はできないって思っていたけどさ、勝手にこっちでそう決めたって、規則違反じゃないだろう? なんだっけ。兄弟みたいな友達っていうか、なんか、そういうアレだ」 「そういうアレか」 「そう。そういうアレだ」  どういうアレなのか、美月はよくわからなかった。けれどその提案は、とても魅力的だった。 「うん……いいかもしれない。祐樹となら、家族になってもよさそうだ」 「居心地がいいだろう? 僕の隣は」 「そうだね。とても自然体でいられるというか、忘れていたことを思い出させてくれるというか……とにかく、いい刺激を受けられるし、たのしいよ」 「なら、決まりだ」  ギュッと抱きしめられて、美月も祐樹を抱きしめ返す。彼の肩越しに見えた和真がうれしそうにほほえんでいて、なんだか照れくさくなった。 「祐樹。そろそろ食堂に行かないと。夕食の時間に遅れたら大変だ」 「教官に怒られるのは勘弁だな」  ふたりが離れると、それぞれの護衛が隣に立った。 「それじゃ、行こうか」 「うん、行こう」  晴れ晴れとした気持ちで、美月は祐樹と共に食堂へ向かう。 (こんな関係を築ける相手がいるなんて、思わなかったな)  美月の脳裏に、机の奥にしまってあるボルトとナットの姿が浮かぶ。 (祐樹はオメガだから、僕のボルトにはならないけれど)  ピッタリ重なるボルトのアルファは、こんなふうに過ごせる相手なのかもしれないと、美月は居心地のよさを胸に刻んだ。

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