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第2話「風と共に去りぬ」
そっと……
胸元から引き離す。
あたたかな体温は、俺の手を握ったまま。
幼い頃つないだ手が、今は大きくなって俺の手を掴んでいる。
「本土だ」
良かった。
北方でも、南方でもない。
本土防衛に専守するという事か。
最悪の戦地は避けられた。
(山本は満州から離れるが……)
一先 ず安心だ。
ほっと吐いた息を。
ハッとして飲み込んだ。
ドキンッ
心臓が不規則に脈打つ。
(山本は満州を離れるんだぞ)
なのに、なぜ?
(あんな事を言ったんだ?)
これからも一緒にいられる……と。
(満州を離れるお前が、どうしてそんな事を言うんだ)
一緒にいられる訳ないのに。
ギリギリ、と……
呼吸が苦しい。
心臓を締めつける。
鼓動が早鐘を打つ。
「俺……」
不意に風が、頬を撫でて舞い上がった。
空へ
「知覧 に行くわ」
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