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第12話

「いつも誘うタイミングが悪いんですよ、ナギセンパイは…」 アキラは言葉を使いわけていう。 「ふーん…しかしだ、サクヤ。本当、綺麗になったよな…入会当初から知ってるが…こんな美人になるなんてな…」 頬に片手で触れ…感心したようにアキラをみつめる。 なかなか相手もナンパのプロ、少々断っても動じない… 「…どんなに褒めたって相手はしません」 キッと睨んでナギを見返す。 ナギはアキラの頬から栗色の髪へ触れ頭を撫でる仕草でアキラの髪ゴムをスッと抜き取る。 「あっ、ちょッ返してください、ゴム!」 アキラは怒りながら長身のナギを見上げる。 ふわっと結んであった髪が広がり肩に触れ耳と頬を微かに隠す。 小さい顔がさらに小さく見えるアキラ… ナギはクイっとアキラの顎をもち上げ…まじまじと見つめる。 「んー、やはり綺麗だ…なかなかいないよな、お前みたいなやつ…誘ってるだろ」 ナギは色目づいた声でそう口説いてくる。 「はぁ…顔は生まれつきだし、別に誘ってなんかいませんよ。それよりゴム返してください!」 また大きくため息をついて、髪ゴムを取り返そうとするが… ナギはさっと隠して… 「んー、じゃ…ゴムはキスと交換だ」 「は?…なんでですか」 アキラはナギの言葉を聞いて不平等なかけひきだな…とごちると… 「丁度よかった、俺もゴム無くしてた所だったんだ…」 笑いながらアキラのゴムで自分の茶長髪をまとめて結ぶナギ。 「ナギセンパイ…」 もぅ、と怒りながらため息をつく。 ゴムのスペアは生憎持ち合わせておらず… 髪をおろしたまま歩いていると余計、皆の気をひくらしくBOUSでは撮影以外、髪を結んでいないと落ち着かないアキラ。 その様子を堪え難く見ていたケンジ… (くそッ…ナギセンパイさえ居なかったら俺も出来るのに…) センパイには逆らえない… ケンジはぐっと唇を噛んで拳を握り、後を引かれる思いでこの場を立ち去る。 それすら気付かず、アキラを口説くのを楽しんでいる。 どーする?と上から見下ろされてアキラは短く息をついて… 「ふぅ。じゃ、キスだけね」 軽く頷いて瞳を合わせる… 「よっしゃ!」 にわかに笑顔が増すナギ。

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