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第44話
「…きっとな、それは自己防衛本能で忘れてんだよ。だから無理に思い出さなくてもいいし、別に頭おかしいわけじゃねーだろ、そうゆうの」
ヨシなりに結論づけて答える。
「そっか…ヨシはコレやった時の事…覚えてるんだ」
ルードはフト振り返って、ヨシの左手をとっていう。
「…あぁ、自分でやったからな、これは…」
頷いて自分の左手首を見るヨシ。
「俺、自分のは、覚えてないから他人事みたいだけど、そっちの傷はみてるだけで痛いって思う…」
ルードは簡単に身体を洗ってお湯につかりながら実感を込めていう。
「はは、確かになぁ…」
ヨシは、はじめに髪を洗いながらルードの言葉に頷く…
「それってカッターとかカミソリとかで切った傷跡じゃないよな?」
ヨシの手首に残る普通じゃないリストカットのアトを不思議に思ってなにげに聞く…
「おう、コレはハサミでやったからなー」
「ハサミッ!?考えただけでイタイな」
「あ、普通の紙切りハサミじゃねーよ、農具用の剪定とかに使う先の尖った小さいハサミ、知らねーだろうなルードとか…」
「せんてい?」
ルードは首を傾げる。
「枝とか余分な葉を切ったりするのに使うハサミのこと」
髪を流して今度は身体を洗っているヨシ。
ちゃんとルードに答えている。
「へぇ、そうなんだ…」
ルードが頷いてヨシの話に耳を傾ける。
「よくさ、アイツら、俺を納屋へ閉じこめてたんだよ」
「なや?」
「そ、農具とか置いてる小さい小屋のこと、夏でも閉じこめたら3日、4日出してもらえなくてさ、暑いし暗いし…メシは食えねーし、水は貯め水があったから脱水で死ぬことはなかったけど…今思い出しても地獄だな。…まぁ冬は冬でツライけど…」
顔を歪めて思い出すように話す。
「…うん、俺もよく閉じこめられたりしてたけど、すげーヤだよなー」
共感して頷くルード…それで話しやすくなったのかヨシは昔のコトをルードに教えていく…
「前にも言ったけどコレやったのは丁度小5の夏休みん時かな、納屋に閉じこめられて一週間くらい、何も食ってなくて…起き上がるのもやっとな感じで、もう出してもらえずこのまま死ぬんだとか思ってたな…んでちょうどいい所に剪定バサミが落ちてて…」
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