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第51話

「………」 アキラはみずきの言葉を聞いてもすぐには答えない。 ちょっと意地を張ったような顔をしていたけれど… 「…はぁ」 浅く溜め息をついて… そっとみずきの胸元に頭を寄せて、身体を預ける… そして… 「…頭、痛い」 ぽつりと呟くようにみずきに伝える。 「あぁ、どのくらい?」 アキラを優しく抱きとめながらもう少し聞く… 「…割れそう」 アキラは顔を伏せたまま擦れた声でいう。 みずきはそのアキラの額にそっと手をあてて優しく聞く。 「…酒を飲んだからか?」 アキラの身体はかなり熱い。 39度近くは上がっているだろう…不調を訴えないわけがない。 アキラは頭痛の為か…ゆっくり頭を軽く横に振って答える。 「違う…酒、飲んでから…すぐ、風呂入ったから…」 身体が温まり血流が良くなって酒が普通より早く体中にまわったから…それで、急に熱が上がったのだ… 「そうか…」 アキラの言葉に頷くみずき。 「…また、失敗した」 自分の身体のことを計り切れていなかったから…こうなった。 そんな自分にイラついて…自業自得とポツリ呟くアキラ。 「アキラ…、どうしたい…?」 苛々している時は…あまりこちらからどうこう言わないほうがいいので、優しく訊ねるみずき。 「薬飲んだし…オレ、早めに寝たいから…」 「あぁ、熱が高いし…その方がいいな」 そっと抱き寄せて…熱っぽいアキラの頬に、顔を寄せながら答える。 アキラの身体は本当に不思議だ… つい1時間前までは元気で熱もなかったのに…急激に悪くなったりする。 それをすべて把握するのは本人でも難しいだろう。 みずきがそう頭で思っていると…アキラがポツリと話し出す。 「でも、明日は絶対行きたいから…みんなには風邪ぎみってことにしておいて…」 すっと、顔を上げて続けて… 「そうすれば明日、途中で身体怠くなっても誤魔化せるだろ…」 紅潮した頬… 発熱か頭痛の為、潤んだ瞳を向けて言う。 「…わかった、吐き気はしない?」 アキラは、頭が痛すぎて吐き気がすることがあるから… 「…うん、そこまで悪かったら起きてない」 そっとみずきから離れながら答える。 「明日…辛くなったら、すぐ俺に言えよ」 ルードたちの前では強がるアキラだけど… こうして俺だけに伝えてくれること…最近になってからだけど、ようやく少しずつ頼ってくれている。 それが特別を感じられる瞬間だから…嬉しい気持ちに浸れるみずき。 「ふ、…限界近くなったら言うよ」 みずきの言葉に少しだけ笑って…そう答える。 「アキラ…」 そうじゃなくて…と名前を呼ぶみずきだが… アキラはみずきから離れて皆のいる方へ歩き出す。

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