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第54話
アキラがひとり考えあぐねていると…
不意に部屋の戸が開く…
(みずき!?)
はっとしてアキラは重い頭を上げる。
「どうした?アキラ…」
はた、と瞳が合っていつものように優しく聞くみずき。
「な、どうしたじゃねーよ、なんで…」
「…?熱が高そうだったから、体温計を取りに行ってたんだ…」
なぜか怒っているようなアキラを見て、取り敢えず説明する。
「いつも、置いてある場所になくてな…アキラ、熱測ろう…」
黙っているアキラに続けて言って、ベッドサイドに座る。
「それならそうと言って行けよなっ!バカ…」
さっき自分が考えていた事を思い出すと恥かしくなる。
ついついみずきに八つ当りなアキラ。
「……、言ってなかったか?」
首を軽く傾げ、困ったように聞く。
「全然!」
ムスっと答えるアキラ。
「…すまない、アキラの体調の事を考えていたから…言って行ったと思っていた…ごめん」
「……」
素直に謝るみずきに、それ以上怒れない。
「…熱が高かったなら、氷枕をつくるから、測ろう」
みずきは優しく言い…体温計を取り出す。
「……」
アキラが黙ったまま動かないので…
「…ちょっと、すまない」
黒色のパジャマの衿ボタンをひとつ外して…体温計をワキに入れようとする。
しかし、顔を伏せていたアキラが突然みずきの肩に抱きついてくる。
「!?アキラっ」
驚くみずきだが…
「…わ!」
手に思うように力が入らず…
ずるッとアキラの手が滑り落ちそうになる。
「アキラ!」
みずきは、咄嗟にアキラの背中を支えてそれを止める。
「…どうしたんだ?アキラ」
行動が理解できなくて、そっと聞いてみる。
「……、いて…」
ぼそっと小声で抱きついたままいう。
「え…?」
小さく聞き返す。
「…ここに居て…!」
オレが寝るまで…!
アキラにしては、かなりプライドを折ったお願いだったので、ややツンとした口調になってしまう。
「……えっ!」
思わぬ言葉にみずきは、アキラの顔を覗いて、もう一度問ってしまう。
「も、いい…」
何回も言うかよっ…と、紅い顔をさらに紅くフテさせ、そっぽむく。
「…アキラ」
そんなアキラの言動が愛しくて…
俺に居てほしいと言ってくれた…
それだけで嬉しい気持ちになるみずき。
少し考えて言葉をかける。
「俺は、そのつもりだったけれど…?」
ちゃんと、傍にいるつもりだったよと…
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