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第55話

「でも、お前、さっきルードにすぐ行くって…言ってただろ?」 むぅ…とした感じのまま言い返すアキラ。 みずきはそっとアキラをベッドへ寝させる。 布団をかけて…そっと体温計もはさみこむ。 「あぁ、でも…熱があるお前を1人にさせておける訳ないだろう…ちゃんと居るよ」 優しくアキラの髪を撫でながら答える。 「……ん」 頷いたものの…まだ納得してないアキラ、顔をしかめる。 「さっきは、せっかくルードが作ってくれたお茶漬けだから、ヨシに食べられたらいけないなと思ってそう言っただけだから…」 ちゃんと説明するみずき。 「……」 そんなみずきを見て…ちょっと気恥ずかしくなる。 雰囲気を変えるために、みずきの鼻先をさっとつまむ… 「ア、アキラ!?」 「…ちゃんと言わなかったバツ!」 驚いて慌てるみずきをみてふっと、笑いながら言うアキラ。 「アキラ…」 丁度その時、アキラのワキに入れていた体温計の音がなる。 「…ほら、測れたよ?」 アキラのいたずらにもメゲず、みずきは手をそっとよけつつ、体温計を抜き取る。 みずきが…測れた体温計の数値を見て顔をしかめる。 「……熱、何度かあてよっかー?」 機嫌を回復して、のほほんと声をだすアキラ。 「アキラ…」 そんな場合ではないだろう…と首を傾けるみずきだけど… 「…えと、たぶん…8度5分くらい?」 気にせず聞いてくるアキラ。 「いや、8度9分だ…かなり高いな、辛くないのか?」 「…ウン、薬、効いてきたから頭痛とかはないし…少しボーっとして息苦しいくらい、悪かったらもっと機嫌悪いし、違うだろオレ…さっきみたいに…」 ぽそっとみずきに伝えるアキラ。 「あぁ、そうだな…」 かなり具合が悪い時は、苛々して感情的になるアキラ… 「…どっか痛かったりするとさ、少しの事でもカッとなって、馬鹿な事言うから…自分でも困る」 アキラは瞳を閉じながら静かにいう。 「…気にすることはない、苦しい時は、みんな同じだから…」 優しく髪を撫でてアキラの熱い片手を握るみずき… 「ん、そっか…」 眠気のためか曖昧に答える。 みずきは、しばらく手を握ったまま…アキラを優しく見守る。 「……」 綺麗な横顔… そのうち…アキラは眠りに入ったのか、静かに規則正しい呼吸をはじめる。 疲れている時などはそう時間をかけずに入眠するアキラ… すぐ体調をくずすから、目が離せない。 (明日…大丈夫だろうか…取り敢えず、熱が下がらなければ出歩くのは難しいだろう…でもアキラは行くのを楽しみにしてるから…) みずきはそう思いながらアキラの手を、布団の中へ入れて…握っていた手を離す。 アキラの熱が移って手のひらが熱くなっている。 (氷枕…作ってくるか…) みずきは立ち上がって氷枕を取りにいく… 「みずき~!布団とかねーのか?このまま寝るのは寒いんだけど!」 ルードが寝室からでてきたみずきに早速聞いてくる。 「あぁ、今、持ってくる。もう寝るのか?」 みずきはそう聞き返す。 「うん、もう起きててもすることないし…ヨシも眠たそうだしな?」 「あー?別に眠たい訳じゃねーけど…」 軽く頭を掻きながら言い返すヨシ。 「嘘~酔っ払ってすっげー眠そうだぜー!あくびしてるし」 からかうように言うルードに… 「ちがう、つーてんだろー!ぼーっとしてるだけだって!うりゃ!」 ヨシはルードにじゃれるようにプロレス技をかけている。 「ゔーッ!ギブギブッ」 騒いで煩いふたりを眺めて… 男兄弟がいたらこんな感じなんだろうな…などと思いながら… 「…あまり暴れて散らかすなよ」 多分、片付け役であろう事を了承して言葉をかけるみずき。 「はい、はーい!」 取り敢えず返事をするふたり。

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