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第58話

「ほら…サクヤの動画、見せたことあるだろ?ああゆう、いきなりのレイプを映像に撮って、それを材料に入会の交渉に使うんだよ、普通はな…」 「…いつ見せたんだ?」 サクヤ(アキラ)の撮影映像なんか…と疑問に思って聞くみずき。 「あー…、昔だよ、俺らがBOUS卒業する前、ちょっと知り合ってな、ったく、説明してんだから邪魔すんなって」 話の腰を折られて、ヨシがツンと言い返す。 「あぁ、悪い…でも、不用意に外部の…しかも小学生に見せる映像じゃないからな…」 「ヘイヘイ…でも、ルードだけだぜ?」 「終わったコトはいいじゃん、で?みずきはなんの例外だったの?」 どっちでもいいから早く教えて、と、催促するルード。 「…俺は、皆がしてる入会時のレイプ撮影をしてないんだ」 仕方ないな、と答えるみずき。 「え、何で?」 「こいつはさ、先輩に外で会って、話し合いだけで入会したんだぜ~、羨ましい奴」 そうそうと頷いて言うヨシ。 「俺は、脅迫の意味でのレイプ撮影が必要なかったんだ…。脅迫されなくても働く気があったから」 「そっか、じゃ…運が良かったんだ、みずきは…」 「まぁ、他の奴よりはな…」 やや首を傾げながら答える。 「当たり前だろ、なんだかんだ言っても、ガキん頃に強姦されるのはココロにキズ残るぜ、トラウマになってる奴もいんじゃねーの?」 ヨシはみずきに聞くように言う。 「あぁ、そうだな…」 みずきは頷いて答える。 「ヨシもレイプされたんだろ?そんな恐い目してよく働く気になるよな…」 ルードが不思議そうにいうと… 「まぁな、でもBOUSの奴ら、恐怖心だけ植え付けて終わりじゃくて、ちゃんとアフターケアが万全だから…」 「どういうコト?」 「レイプしたあと、怪我してたら手当てしてくれるし、嘘のように優しくなるんだ、んで混乱してきて流されるって訳」 「それって騙されてるよなー」 「まぁな、だからアキラみたいに辞めたがる奴だって出てくるんだ、そんな簡単に辞めれる訳ねーだろーけど…」 ルードとヨシはBOUSの話に花を咲かせている。 みずきは茶漬けを食べ終えて、すっと立ち上がる。 「どこ行くんだ?」 ヨシがすぐ聞いてくる。 「風呂入ってくる、お前らもいい加減寝ろよ…」 ついでに空缶や食器を片付けながらいうみずき。 「はーい!」 「いってらっしゃい!」 思い思いに返事してまた会話を続けるふたり。 みずきはやはり発熱中のアキラが気になり、一度様子を見にいく… 隣の部屋が騒がしいにも関わらず、アキラはすっかり熟睡していて…みずきもひと安心。 さっそく風呂に入って後片付けをしたのち、ヨシたちに声をかけて、寝室へとやってくる。 一緒にいると安らげるひとの元へ…。 「…おやすみ、アキラ」 そっと囁いて、アキラを起こさないよう静かに布団に入るみずき。 午前2時半、ようやくアキラに寄り添うように眠りにつく… 今年の年越しは賑やかだった。 来年も…同じように集まることが出来たら… そうささやかに願いながら…。 会話を続けていたルードとヨシも、電気を消してからいつの間にやら夢の中なのだった。 《カウントダウン》終

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