57 / 145
第58話
「ほら…サクヤの動画、見せたことあるだろ?ああゆう、いきなりのレイプを映像に撮って、それを材料に入会の交渉に使うんだよ、普通はな…」
「…いつ見せたんだ?」
サクヤ(アキラ)の撮影映像なんか…と疑問に思って聞くみずき。
「あー…、昔だよ、俺らがBOUS卒業する前、ちょっと知り合ってな、ったく、説明してんだから邪魔すんなって」
話の腰を折られて、ヨシがツンと言い返す。
「あぁ、悪い…でも、不用意に外部の…しかも小学生に見せる映像じゃないからな…」
「ヘイヘイ…でも、ルードだけだぜ?」
「終わったコトはいいじゃん、で?みずきはなんの例外だったの?」
どっちでもいいから早く教えて、と、催促するルード。
「…俺は、皆がしてる入会時のレイプ撮影をしてないんだ」
仕方ないな、と答えるみずき。
「え、何で?」
「こいつはさ、先輩に外で会って、話し合いだけで入会したんだぜ~、羨ましい奴」
そうそうと頷いて言うヨシ。
「俺は、脅迫の意味でのレイプ撮影が必要なかったんだ…。脅迫されなくても働く気があったから」
「そっか、じゃ…運が良かったんだ、みずきは…」
「まぁ、他の奴よりはな…」
やや首を傾げながら答える。
「当たり前だろ、なんだかんだ言っても、ガキん頃に強姦されるのはココロにキズ残るぜ、トラウマになってる奴もいんじゃねーの?」
ヨシはみずきに聞くように言う。
「あぁ、そうだな…」
みずきは頷いて答える。
「ヨシもレイプされたんだろ?そんな恐い目してよく働く気になるよな…」
ルードが不思議そうにいうと…
「まぁな、でもBOUSの奴ら、恐怖心だけ植え付けて終わりじゃくて、ちゃんとアフターケアが万全だから…」
「どういうコト?」
「レイプしたあと、怪我してたら手当てしてくれるし、嘘のように優しくなるんだ、んで混乱してきて流されるって訳」
「それって騙されてるよなー」
「まぁな、だからアキラみたいに辞めたがる奴だって出てくるんだ、そんな簡単に辞めれる訳ねーだろーけど…」
ルードとヨシはBOUSの話に花を咲かせている。
みずきは茶漬けを食べ終えて、すっと立ち上がる。
「どこ行くんだ?」
ヨシがすぐ聞いてくる。
「風呂入ってくる、お前らもいい加減寝ろよ…」
ついでに空缶や食器を片付けながらいうみずき。
「はーい!」
「いってらっしゃい!」
思い思いに返事してまた会話を続けるふたり。
みずきはやはり発熱中のアキラが気になり、一度様子を見にいく…
隣の部屋が騒がしいにも関わらず、アキラはすっかり熟睡していて…みずきもひと安心。
さっそく風呂に入って後片付けをしたのち、ヨシたちに声をかけて、寝室へとやってくる。
一緒にいると安らげるひとの元へ…。
「…おやすみ、アキラ」
そっと囁いて、アキラを起こさないよう静かに布団に入るみずき。
午前2時半、ようやくアキラに寄り添うように眠りにつく…
今年の年越しは賑やかだった。
来年も…同じように集まることが出来たら…
そうささやかに願いながら…。
会話を続けていたルードとヨシも、電気を消してからいつの間にやら夢の中なのだった。
《カウントダウン》終
ともだちにシェアしよう!