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第60話
「…わかったよ」
アキラが楽しみにしている事だから…出来るだけ叶えてやりたい。
「そういえば、ルードたちは?」
続けて聞いてくるアキラ。
「ルードはさっき起きていたけれど…ヨシはまだ寝ていたな、ゆっくりすればいいと言っておいたから、まだ寝ているかもしれない」
雑誌を見るのをやめて、アキラの肩を寄せながら答える。
アキラは口元を抑え軽くあくびをして、少し居心地悪そうに身体の向きを変えながら、みずきにもたれる。
「そっか、まぁ、お前も、せっかくの休みなんだからのんびりしようぜ、な?」
アキラの言葉に優しく微笑み答える。
「あぁ…そうだな」
アキラは昨日と違い、機嫌もいいみたいだし、だいぶ良くなったんだなと安心するみずき。
これなら外出もOKだろうから…。
一年前は…アキラと、一緒に初詣に行けるなんて思いもしなかったことで、顔にはそんなに出ないみずきだけど…遠足か何かのように、すごく嬉しく楽しみに思っているのだった。
ピピピ…と体温計が測定完了の合図を鳴らす。
「測れたな…」
みずきが体温計をみようとすると…
「…ちょっと待てよー」
隠すようにこっそりと自分だけで測定値を確認している。
「アキラ?」
気になって覗き込むと…
アキラは、ふっと顔を上げて…
近づいたみずきに軽くキス…
「…!?」
不意の攻撃に少しだけ動揺しているみずき。
それを面白そうに見つめたあと…
「はい、これなら問題ないよな」
にこにこしながら、体温計を手渡してくる。
「あ、あぁ…」
やはりアキラの無邪気な動きには弱いみずき、その眩しい笑顔から逃げるように体温計の表示に目をやる。
「…37.4分か、まぁまぁだな…」
アキラは、病気のせいか、普段から熱が37度以下にならない体質らしく、この体温はアキラにとっては普通くらいなのだ。
と言っても、普通の人は7.4分といえば微熱程度、一般的には身体がダルかったり、熱っぽいと感じたりする。
その状態が日々続いているアキラが、外出していて疲れやすかったり、すぐ体調を崩したりしてしまうのは無理ないことなのかもしれない。
そんなことなどを考えて動揺した心を抑えつつ体温計を片付けるみずき。
「よーし。熱も無かったことだし、今日…何着ていこうかな」
熱が思ったよりなかったのが嬉しかったのか、アキラの気持ちは出掛けることへかなり傾いていて…
「この前買った服!アレにしよっかな…」
かなり上機嫌のアキラ。
「そんなに慌てなくても大丈夫だから…」
ついつい、そう声をかける。
「むー、」
アキラは少し顔を歪めて黙る。
「アキラ…?」
折角機嫌がよかったアキラを不機嫌にさせてしまったかと、ちょっと慌てるみずきだけど…
「ま、いっか…のんびりするって言ったしな、ルードたちも寝てるんだろ?」
笑顔を戻し機嫌をくずすことなく聞いてくる。
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