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第61話
「あぁ…多分な」
微笑み答えるみずき。
「じゃぁ、みずきでもからかって遊ぼー」
「えっ?」
突然なにを言い出すのかと…
ドキっとする。
それを見てくすくす笑うアキラ。
今度は何をするつもりなんだろうと、少しだけ身構えてしまうみずきだが…
「冗談だよ、でも面白い」
みずきの腕の中で身体を丸めるようにして笑う。
「アキラ…」
なんだか本当に機嫌の良いアキラ…
みずきは滅多にないその姿を失礼ながらおかしいな…と思って、さっき熱がないのを確認したばかりだが、もう一度額に手をあてて確かめてしまう。
「もー、熱はないっていってるだろ!」
その行動にムカっとして怒る。
「あ、すまない…今日は本当に機嫌がいいな」
いつものアキラの反応が返ってきたので安心しつつ謝るみずき。
「そっかー?ま、遠くまで初詣に行くのは初めてだからな、単純に嬉しいし…」
「うん…」
アキラを見つめながら、話を頷いて聞く。
「あ、そうだ、お前、親父さんにちゃんと会いにいってるのか?」
アキラは不意に話を変える。
「え?あぁ、週1ペースで様子を見に行っているよ…」
急な話題転換にも優しく答える。
「まだ入院長引きそうなのか?」
「あぁ、完全に自立出来るまで…といったら4、5年はかかるらしい…それがどうかしたか?」
頷き答え、首を傾げて聞く…
みずきの父親は、アキラの計らいもあり、2年ほど前から重度の薬物中毒、アルコール中毒の治療で入院中なのだ。
入院と療養施設からの通院を繰り返しながら治療をしている。
「ん、別に…気になっただけ」
「……?」
「もし、今日みずきが親父さんに会いにいくなら…ついでに近くだから寄ってほしいトコロがあるんだよ…」
「あぁ、行きたいなら、ついででなくても行くが…用があるのか?」
「うん…まぁ、毎年…プレゼントを渡してる人がいるんだ」
少し照れるような言い方なアキラ。
「えっ!?…だ、誰に?」
アキラのその発言には驚いて、嫉妬心を抑えられずに聞いてしまう。
「今回は何かと迷惑かけてて渡しづらいんだけど…毎年恒例になってるし…」
わざと答えないアキラにみずきは…
「そうじゃなくて、誰にプレゼントなんか…」
しかも…毎年?
アキラから貰ってる人物がいるなんて…羨ましすぎる。
などと心の内で密かに思いながら、結構真剣に聞くみずき。
「ばーか、お前が気にするような人じゃないって」
「…でも、気になる…から」
「ふふ、…みずきもよく知ってる人だよ…オレが唯一、尊敬できる大人…」
くすくす笑いながら教えてくれる。
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