64 / 145

《初詣へ》

そして、昼を過ぎて… ようやくそれぞれ出掛ける支度が整う。 「お前、ホンット遅すぎ!」 アキラが口調を尖らせている相手はヨシ。 「うるせー、どーせ早く行ったって、混んでるだからな、ったく、せっかちな奴だな」 ヨシは朝が弱いのか…ルードが昼飯を作り終えるころまで、ぐっすりと眠っていて…ようやく行動開始なのだった。 ヨシの言葉にムッとしているアキラを見てルードが… 「まぁ、いいじゃん、準備出来たんだし、そういえばコウジはいつ来るんだ?」 「あぁ、さっき連絡したら、準備OKらしいから、車で迎えにいくって言っといた」 「ちょっと待てよ、4人で行くんじゃなかったのか?コウジとかいう奴も来るのかよ?」 ヨシはコウジから電話があったとき1人だけ睡眠中だったので知らないのだ。 「あれ、ヨシに言ってなかったっけ、コウジはアキラの弟、その恋人も一緒に行くんだよ!」 「げッ!全然聞いてねぇぜ!そんな事」 ちょっとまてよ、と抗議するヨシ… 「アキラの弟、ったらチビのくせにやたら狂暴なヤローだろ!」 「あーぁ、すげー言われよう…」 アキラがぼそっと言う。 「コウジはそんなに狂暴じゃないよ!昔のアレはヨシが悪い事したから蹴られたんだろ!」 ルードがすかさず庇う。 忘れもしない、ヨシにはじめて会った時、いきなりレイプされて…それを助けてくれたのがコウジだ。 「…う゛、いや、でも容赦ねーぜ、アイツは…」 あまり思い出したくない事柄に…ぐっ、と詰まりながら言うヨシ。 「人の事言えるのかよ、てめーが」 アキラはヨシから暴行を受けた被害者なのでつい、そうつっこむ… 「あぁ!?つーか、会いたくねぇ!」 アキラの言葉に、一応反応するヨシだが、それどころではないらしい。 「ヨシ、きっと覚えていないって、コウジと会ったのあの時だけだろー」 ルードがそう助け言葉を言うと… 「あ、そうかー、2年も前だしな、覚えてるワケねぇか」 ヨシは、ぱっと顔を明るめて頷く… 「ていうか、ヨシが覚えてる事にびっくりだよ…」 「忘れるわけねーだろ!あんな恥かいたの後にも先にも一回きりだぜ!」 ルードの言葉にヨシはリキを入れて憤慨する。 「くくっ…」 それを見てアキラが肩を揺らして笑う。 「笑うな!」 ヨシはアキラの態度が気に触り、手を上げて頭を叩く真似をする… 「暴力反対ー」 アキラはヨシから離れ、部屋の戸締まりを見てやってきたみずきの影に隠れる…。 「また、何をしているんだ?」 ヨシに向かって言うみずき。 「べ、べつにー何もしてねーぜ。行くんだろ!」 みずきを怒らせるのは恐いので…ぱっと手を引いて言うヨシ。 「アキラ?」 みずきはアキラに訊ねるように瞳を向ける。 「ん?うん平気、でもさーアイツまたオレ殴ろうとするんだぜ!」 アキラはみずきと視線を合わせて、ついでに言い付ける。

ともだちにシェアしよう!