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第76話
「アキラ、着いたよ」
みずきは眠るアキラに、そっと声をかける。
「……」
アキラはよほど熟睡していたのか、みずきの呼び掛けにピクリとも反応しない。
「…アキラ、アキラ?」
みずきは心配になって、肩を揺すって呼んでしまう。
「う…ん、…うるさい」
ようやくアキラはみずきを押しのけるようにして目を覚ます。
みずきはほっと一息ついて、優しく話し掛ける。
「アキラ、よく寝てたな…着いたぞ」
「ん?…着いたって…家?」
まだ眠いのか、ぼーっと答えるアキラ。
「ううん、健次先生の所」
「え、…寄ってくれたのか?」
ちょっと驚き聞くアキラ…
「うん…アキラも疲れてるようだからついでに診てもらおう」
「それは大丈夫だけど…こんな大勢でいったら健次さんの迷惑になるだろ」
アキラは心配して言うが…
「でももう、行っているみたいだからアキラ…」
みずきは車外を指して伝える。
「あ…」
外では先に降りていた4人が病院の入口で待っている。
「行こう、アキラ…」
「…ん」
みずきは頷くアキラの手を取り、ゆっくり引いてゆく…
「こんばんは、あの、楠木院長いますか?」
尋ねているのはコウジ、アキラたちは後ろに下がって様子を伺う。
「院長ですか?ただいま院長室に在室されていると思いますが、どちら様でしょうか?」
看護師はそう答えるが…
「おや、どうしました?」
横から優しく声がかかる。
「あ、健次さん、こんばんは。明けましておめでとうございます」
コウジが言葉を返す。
「こんばんは、おめでとうございます。コウジ…よく来てくれました」
いつもの笑顔で迎えてくれる。
「うん、アキ兄も連れて来たよ、ほら、アキ兄!」
コウジに引っ張られ、健次の前へ姿を見せるアキラ。
「…健次さん、すみません。連絡しなくて…」
少しバツが悪そうに謝るアキラ。
「…本当ですよ、心配していました。今はどこへ住んでいるのですか?」
アキラの肩に触れ、軽く叱るような顔で言う健次。
「うん、ごめんなさい…。今は、みずきの所に置いてもらってる」
素直に謝るアキラ。
「…色々、すみませんでした」
みずきは、健次と目が合って会釈する。
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