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第79話

「去年は黄色いお守りでしたからね。アキラのくれるお守りはよく効きますよ」 「ん、今年も渡せて良かった…」 微妙な笑顔で頷くアキラ。 「…最近アキラから、連絡がなかったですが、今日は来てくれるだろうと思っていました、来年も楽しみにしていますね」 「うーん、期待されるとなぁ…来年か、遠すぎてわかんねー…でも、今と変わりなかったらまた誕生日に来るから…」 はにかんだように言うアキラが可愛く思え… 「はい。約束です」 軽く頭を撫でる健次。 「子ども扱いはよしてよ、健次さん。もうすぐ19になるんだからさ、オレ…」 ちょっと顔をしかめて言うアキラ。 「そうでしたね、早いものです。アキラの誕生日には会えますか?」 「うーん。その日、学校かも…会えるかまだ判んない」 「そうですか、では、私からのプレゼントは鈴鹿さんの家におくりましょうかね」 そう聞いてくる健次。 「…うん、ありがと…」 健次の前ではかなり素直なアキラ。 こくんと頷く。 「…それはそうと、兵庫県の西医大に、筋神経系の病気を専門に研究するチームができたそうですよ?」 不意に話題を変えて教える健次。 「うん、知ってる…たぶんオレの病気は治んないけど、少しでも…楽な薬ができれば嬉しいから…」 「…そうですね」 「あと…」 アキラは少し考えるように続けて話す。 「…今は、みずきのトコにいるけど、いずれは出て、西医大の周辺施設に入ろうと思ってる…そこならリハビリも出来るし、単独寮の施設あるから…」 ゆっくりと決めていたことを話す。 「…アキラ」 「うん、まだ空きがなくて先になるけど、病院も近くだから、1人でも安心でしょ…」 「しかし…鈴鹿さんは、知っているのですか?」 健次の問いに柔らかく首を横に振る。 「みずきには…そのうち言うけど…」 そっと俯いてつぶやく。 みずきと暮らし始めて一ヶ月経つ… その間、不自由なことなんてなくて、それどころか…優しいみずきの場所は、居心地がよくなっている。 あまり…その温かさに慣れてはいけないと思いつつ… だらだらと流されて過ごしてきている自分…。 「あまり、みずきに世話になってばかりもいられないし、自立しようと思って…」 みずきは…たぶん反対するだろう。 一緒に住んでいる今が、一番幸せだと言っていたから…。 だから、今すぐに、って訳じゃなくて… でも、体調がいつ悪くなるか判らないから…自立できる場所も確保しておきたい。 一緒に暮らしていたら絶対…余計な心配ばかりかけることになるから… 「もういい?健次さん。あ、消灯時間近いよ、みんな呼んでこないと…」 アキラは立ち上がり話しを終わらせる。 「…アキラ」 独りで決めてしまうアキラを気掛かりに思い、健次は呼んでしまう。 「…健次さんも、あまり心配しなくていいよ、オレ、結構しっかり考えてるから…」

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