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新章《困惑の終撮》
一月初旬…
外はかなり寒くなり…時折雪もちらつく…
殺風景な住宅街を、仕事からバイクで急ぎ帰るみずき。
自宅には迎えてくれる人がいるから…
「…ただいま」
そっと、声を出して自分のアパートに入るみずき。
定刻どおり帰ってきたみずきに…
「…あ、おかえり~、お疲れ」
いつものようにソファに座ったアキラから返事が返ってくる。
部屋のなかに入るといい匂いがして…
「ただいま…アキラ、いい匂いがする」
鞄を置き、アキラの隣に座りながら呟く…
「気付いた?材料揃ってたから、今日作ったんだ晩飯。何だと思う?」
「『おでん』の匂いだな…アキラ」
「アタリ。たまにはな、簡単だし」
アキラは軽く微笑みながらみずきの頬にキスする。
「ありがとう…嬉しいよ」
アキラの手料理が食べられるだけでかなり満足なみずき。
アキラの肩を寄せ、瞳を合わせてお礼を言う。
いつもはみずきが仕事から帰って2人で食事の支度をする。
それはそれで楽しいけれど、寒い外から帰ってきたときに温かい食事があるとやはり嬉しい…。
時々だけどアキラは、気まぐれに作ってくれるのだ…。
「食べる?」
「あぁ、食べるよ。もちろん、ありがとう…」
アキラの言葉にすぐ頷く。
「礼いいすぎ!ったく、みずきは…」
「すまない、本当に嬉しいからつい…」
素直な気持ちを伝える。
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