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第88話
「バーカ…少ししか作ってないけど、ナベ運んでくれる?」
ちょっと照れ隠ししながら答える。
「あぁ、わかったよ」
みずきが頷いて立ち上がり、キッチンへ向かおうとした時…
テーブルの上に置いていたアキラの携帯電話が鳴りはじめる。
「電話…ルードか?」
みずきは気になって聞くが‥…
「ううん、はい…」
アキラは首を軽く横に振って携帯電話をとる。
「……」
その様子を立ったまま見守るみずき。
「…はい、はい。分かりました…」
アキラは事務的に頷いて、応答している。
「じゃ、昼から行けばいいんですね?…はい」
そう、しめくくり、電話を切る。
「……」
みずきがアキラの表情を探るように言葉を待っていると…
「今の?BOUSの先輩から、終撮の日が決まったってさ」
「…いつ?」
「12、13日の2日間。丁度、学校休みらしいから…」
終撮は2日かけて撮られる。
何気に答えるアキラ…
「…13」
日にちを聞いてポツリと呟くみずき…
1月13日は、アキラの誕生日だから…
アキラは戸籍上は4月2日生まれになっているけど、本当の誕生日は1月13日だと、以前言っていた。
だから…その日はアキラと一緒に過ごしたかったのだけど…。
アキラは普通に返答する。
「そ、相手はカズキ、みずきも知ってるだろ、年下の奴。よかったケンジ(先輩)じゃなくて…」
BOUSのケンジは、かなり強引でしつこい奴だから、最後まで関わりたくはないから…。
「早く帰れるのか?」
みずきはすぐ質問する。
「わかんねーよ、終撮なんかはじめてなんだし、おまえの方が詳しいだろ、経験者なんだから…」
そう言い返してくる。
「そうだな…」
と、言っても自分が終撮をしたのは一年以上前…
みずきは記憶を思い起こしてみる。
確か、泊まり込みで撮影して…
その後、世話になった助手たちに挨拶して…
「昼前には帰れたな…」
「ふーん、スムーズに帰れたらだけどな」
ぽそっと言うアキラにみずきは…
「…迎えに行く、その日、仕事休みだから…」
アキラの誕生日にアキラが帰ってこないなど考えられない…
一緒に居たいと思うことは、おかしいことではないはずだから…
「また…、お前が迎えに来ても、すぐ出て行けるか分からないし…」
アキラは溜息をついて言うが…
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