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第92話
「…大丈夫、お前演技上手い方だし…時間も倍あるしな、オレの方が足引っ張るカモしれないから」
「そんなことないっす、こちらこそ、よろしくっス…」
アキラと話したからか、だんだんいつものペースを取り戻してくるカズキ。
「はは、台本読もっか」
相手の機嫌が良くなったのを確信して、マイペースに戻るアキラ。
「はい」
頷いて返事をする。
「…うーん」
台本を一通り読んでみると…
かなり複雑な撮り方の内容もあって、NG連発決定だな…と心で呟くアキラ。
かなり時間をかけて台本チェック、リハーサル、そして、シーン1と3の本番…
軽い休憩を挟みながらシーン2の中心内容以外はOKが出て、台本の約半分が撮影終了する。
時刻は、夜11時…
いつもより長い話なので、ここで3時間休憩をとって、シーン2の本番撮影をするのだ…
「はーい、ほな、休憩いきーや、3時間やで」
今日の撮影監督は、関西出身のトモ先輩…
トオル先輩と同期の撮影助手でベテランだ。
『はい』
2人は頷いていったん、撮影ルームを離れる。
「個室…6号が開いてるな…」
辺りを気にしつつ歩くアキラの後をいつものようについていくカズキ。
「じゃ、後で…」
アキラは個室で仮眠しようとカズキに声をかけて…戸を閉めようとする。
「あ、あの…」
カズキは慌てて戸に手をかけて、声を出す。
「ん?なに?」
夜遅いためだいぶ眠気のあるアキラ、ゆっくり首を傾げて聞く…
「…っなんでも、ないっす。また後で…」
この撮影で最後になる…
撮影後誘っても、以前断られているからだめ…
だからって今、誘うのはさすがに断られるだろうな…と口を噤むカズキ。
「…?じゃな」
少し不思議そうな顔して、カズキを見送り戸を閉めるアキラ。
個室に入りロックをかけ…
ベッドに、ごろんとそのまま横になる。
「ふぅ…疲れた」
溜息をつくが、終撮はこれからが本番…
少しでも仮眠しておかなくては…
そう思いつつ、持ってきた鞄の中から携帯電話を目覚ましに使おうと取り出す…
「メールか…みずきだな、きっと」
携帯の画面にメール受信の表示があり、そう思う。
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