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第95話

「……」 なぜかアキラは、みずきに返す言葉がすぐ出てこなかった… 『アキラ?』 答えないアキラを心配して呼ぶみずきの声に… 「うん…アリガト…」 ぽつりと答えて、続けて… 「これ言う為だけに起きてたのか?」 『え…いや、アキラと話しがしたかったから…』 「ばか…、もう時間切れ!切るぞ」 アキラが一方的に言うと… 『えっ、アキラ!待って…もうひとつ』 みずきは慌てて止める。 「ん?」 いったん動作を止めて軽く聞くアキラ… 『…その、…愛してるから、アキラ…』 みずきはそっとアキラに囁く… その言葉を聞いてなぜか…胸が痛く切なくなる感覚が走る。 「……、はいはい」 心によぎった想いを隠すように…わざと、そっけなく答える。 『…アキラ』 「もう時間ぎれだって、…でも、19歳になって、最初に口きいたのも、おめでとう言ってくれたのも…」 そして愛していると言ってくれたのも… 「…おまえだから、みずき」 『あぁ…』 嬉しそうに頷く。 そんなささいなことでも、こんなに喜んでくれるみずき。 「…じゃ、切るから、早く寝ろよ」 アキラは、そう付け足して通話を終える。 『あぁ、わかった…』 みずきも頷いて通話を終える。 「……」 しばらく、ぼーっとしてしまう…。 愛してるなんて、よく言えるよな… オレは、これから撮影とはいえ…カズキと寝るのに… そう考えると、なぜか胸が痛くなる。 愛されても…裏切ってばかりで、何ひとつ返せていない…。 「はぁ、みずきの馬鹿…」 頭を振り、このもやもやした感情を、とりあえずみずきのせいにして…動き出すアキラ。 撮影前に必ず飲む薬を身体に流しこみ… 個室をあとにする。 撮影スタジオには、それぞれ休憩を終えて、関係者が集まってくる。 ようやく主要内容のシーン2の撮影。 つまり…エッチな内容のみの撮影に入る…。

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