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第96話
カズキとは、前回、シリーズものの撮影をしていて、終撮もその続きのような内容の話になっている。
ただし、終撮は…普段使わない血のりなどを使ったり、手順が異なるので、念入りにリハーサルを行い、完璧に進むようにするのだ。
シーン2では、NGを出さないのが望ましいから…。
3時間近くリハーサルにかけて…
「まぁ、ええやろ、本番用意!」
ようやく監督がリハにOKを出して、再度個々メイクを行いに撮影ルームをいったん出て、控え室に入る。
時刻は明け方4時半、皆それぞれ疲れと眠気がかかってくるが…
主役の2人は、そんなことは言ってられない…
うまくいかないと帰れないのだから…。
「大丈夫?カズキ」
本番撮影の準備中に静かに声をかける。
「はい、大丈夫っす!」
しっかり頷くカズキを見て安心するアキラ。
「相手、ホントお前で良かった…」
そう微笑み返す。
「……」
そんな嘘のない笑顔を見て…カズキは自分の胸に過ぎった思いに罪悪感がはしる。
(NGを出して撮影が長引けば、サクヤ先輩と居れる時間が長くなる…)
そんな馬鹿なことを思ってしまった。
せっかく、サクヤ先輩が俺を信頼してくれているのに…カズキは、そう思い直し、アキラを見る。
「…ん?何?」
見つめられて、軽く聞く。
「サクヤ先輩って、やっぱり綺麗ッス…」
「はぁ?なんだよ急に」
アキラは首を傾げる。
「俺、撮影上手くやります、だから…後で先輩の携帯NBとメルアド教えてください…」
多分、これが最後の挑戦…
空振りなら…ただの後輩の自分は諦めるしかない…から。
「…カズキ」
しばらく考えるように黙って…カズキを見つめるアキラ。
カズキは、不安そうに答えを待っている。
「…そうだな、携帯ナンバーは駄目だけど、メールアドレスくらいならいいよ…」
カズキの瞳に押されて頷く。
「ホントですか?」
カズキの目が輝く…
「ただし、本番でNG出さなかったらな」
意地悪な宿題を出す。
「ええっ、ムチャっす、それ…」
「じゃ、教えてやらない」
くすっと笑いからかう。
「えぇっ、駄目っす、教えてくださいよ!本番、頑張りますから!」
「はは、その意気、その意気。行こうか…」
綺麗に…薄めのメイクがされた顔に、肩にかかるくらいの淡い栗色の髪…。
誰もが見惚れてしまいそうな容姿のアキラ…
そんな彼に2度と会えなくなるのは嫌だから、絶対サクヤの言う課題をクリアして、メールアドレスを教えて貰う。
そう意気込むカズキだった。
《終了撮影》終
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