96 / 145
第98話
「これでもか?」
囁くようにいい、さらにサクヤのそれを促す。
「や…ァ、っん…」
びくんと身体を震わせるサクヤだったが…
「ストップや!目線ッ2カメにおくらなあかんやろ!アップくるで、サクちゃんッ」
大事なカメラ目線を忘れていたらしく、一時中断…
「…はぁ、ッスミマセン…」
呼吸が上がって息をついて謝るサクヤ…
そしてパートナーにも…
「ゴメン…」
短く謝る。
「いえ、いいっすよ…」
カズキは役柄と本人とのギャップがかなりあるが、何度となく中断されても、完璧にこなしている。
「覚えてるんだけど…」
流れについていけない…
ぽつりと呟く…。
「はい!034、カズちゃんから、スタート!」
そこへ監督の声…
すぐ演技に入る…
「…これでもか?」
さっと表情を変え、サクヤを押さえ付けたまま、そこへ触れていく…
「や…ァッ、っん…」
目線をわすれないよう演技するサクヤ…
カズキが与える快感に流されそうになる頭を必死で保ち…次の行動を頭に描く…
「嬉しいんだろ?言えよ」
カズキは反応を返すサクヤのそれを手のナカに収めたまま聞く…
「んんっ…ちが…う、嫌ッ…ァ痛っ、ぅ…」
サクヤの拒否を許さないように手の中のソレを強く握る。
「…アァッ放し…て、や、ふッ…ぅ、んッ」
声を上げる唇を無理矢理ディープキスで塞ぐカズキ…
深く口づけをしたあと…カズキはゆっくり唇を離し、サクヤを見つめる。
「はぁ…っ、はぁッ…」
呼吸が上がり息をつくように、言葉なくカズキを睨むサクヤ…
「俺のものになれ、サクヤ…」
乱暴な言葉使いを抑え…
囁くようにいうカズキ…
「お前が抵抗しなければ…痛めつけなくてもすむ…」
そう続ける。
「…っ、嘘だ…オレは、あんたじゃ…嫌なんだッ…暴力を振るわない彼が…セイヤが好きな…、ぅ痛ッ」
サクヤは顔を横に振りカズキを拒否…
第三者の名を聞いたとたん、カズキの平手が言葉を遮る。
「黙れッ!!」
悲しく怒りの言葉が響く…
「はーい、OKやで、サクちゃん、準備。これからは、とくにNGにきーつけなあかんで!」
監督が準備のため、一時、撮影を止める。
そしてもう一度カツをいれる。
ともだちにシェアしよう!