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第101話

「…帰ったら、お前は…奴の所へ行くのか?…奴に抱かれる気か…?」 憎しみに近い感情で問う… 「ッ…ぅ」 「奴のもとにッ…俺のものにならないのならッいっそ…」 カズキは逃げないようサクヤの腕を片手で握り… もう片方の手を、投げ落ちていた鞄へ伸ばす… 中身をさぐり… サバイバルナイフを掴み出す。 「ッ…嫌っ…」 凶器を目にしたサクヤは、生つばを飲み込み… 恐怖に身体を震わせ逃れようと必死になる。 片手でサクヤの腰を抑えたまま…喉もとへ刃を充てる。 「俺のものにならないなら…、誰のものにもさせやしないッ!」 カズキはカッと瞳を見開いて怒鳴り… ナイフを逆手に持ち替え…手を震わし、そのまま…勢いよくサクヤの胸を一突きする。 「ァ、痛ッぅう…く、けほっ、かはッ…」 衝撃を受けて… 痛みに呻くサクヤ… 演技に使用したナイフは…先端を保護してあったが… つきたてられるとかなり痛い… サクヤはカズキの上で前のめりになり…胸に充てられた凶器… 先が引っ込み、その部分から血のりが流れでてくるナイフの柄を握り締め抑える。 口の中…舌の裏に隠してあった血糊を噛み破り… ムセながら、口から鮮血を滴らせるサクヤ… その赤い雫が…カズキの頬へとポタっポタ…と舞い落ちる。 「けほっ、ぅ…は、」 震える唇で言葉を紡ごうと…声を出すが… その単語は宙に消えて… グラリと身体が支えを失い… カズキに覆い被さるように重なる。 そのまま…サクヤはカズキの上で深い緑色の瞳を…静かに閉じてゆく… そしてしばしの間… 呼吸を止める… カズキは…震える手で、サクヤを抱きしめて… 言葉なく、その瞳を閉じる… その瞬間、すーっとカズキの瞳から零れる涙… 「…あいしてる…」 掠れた声が静かに囁かれた…。 数秒の空白のあと… 「はい!オーケイやで!お疲れさん」 監督の声… 一気にまわりが騒がしくなる。 「やっぱ、終撮は違うなぁ」 「サクちゃんがNGださなかったの、珍しい…」 助手たちは口々に好きな事を言っている。 当の本人たちは…撮影の余韻が残り、すぐには動けない… というかアキラはまだ、カズキの先端を含んだままの状態で…抜きたいのだけど、体勢的に自分では無理…

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