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第106話
「……」
しばらく言葉を失うアキラ。
「……」
カズキも黙って返事を待つ…
「わかった…から、離して…カズキ」
腕の中で頷き、そう頼む。
「…はい」
微妙な表情で離してくれる…
アキラは離れ際にカズキを見て…
「カズキ…、オレの事…本気って思ってるなら、オレは…やめときな…」
深緑の瞳に見つめられ、断られているのになぜか胸がドキッとしてしまうカズキ。
「サクヤ先輩…?」
「…やめとけ」
もう一度…真剣な顔で伝える。
「…先輩」
そしてすぐ笑顔を戻し…
「…早く帰れよ、今日はありがとな。バイバイ…」
カズキから離れて、手を軽く振る。
「先輩…今の、恋人とうまくいってないんですか?」
不意に聞いてくるカズキに…
「…なんで?」
ちいさく首を傾げる。
「…先輩、恋人いるのに…なんか、寂しそうだから…」
もう一度、頬に触れて…感じた事を伝えるカズキ。
ほっておけないような…
傍に居てあげたくなるような気持ちになる。
「…気のせいだよ、じゃな…」
カズキの手に触れ避けながら…
静かに否定し、アキラはカズキの首に手をかけ…伸びをして軽く口づける。
そして個室の戸を閉めようとする。
「…じゃ、今までありがとうございました…また、会えますよね?その時までさようなら…」
アキラから手を離し…
名残惜しそうに言葉を出す。
「…ウン」
頷いてアキラはカズキと別れる。
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