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第110話

「よォ…お疲れ」 顔を上げて確認すると… 「…ナギ先輩」 片手を上げて笑いかけてくる撮影助手のナギがいた… その人物を見て再び溜息のアキラ。 「おいおい、せっかく待ってたのに溜息はないだろ?」 アキラの反応に苦笑いしながら、近づくナギ。 「待ってたって、寝起き顔で言われても…」 そっけなく言い返してナギの脇を通り抜けようとする。 「逃げられたら悔しいからな、慌てて起きてきたんだ、俺がいなかったら帰ってたろ?」 アキラの手首を掴んで引き寄せながら聞く。 「……」 当然!と言いたかったが… 言葉を胸に留めて無言で頷く。 言い返す気力もなくなりつつあるアキラ。 「だろ、今日で抱きおさめなんだから、逃げられる訳にはいかないからな」 「…抱き納めって…オレ、ものすごく疲れてるんですけど?」 げんなりしながら答える。 「部屋こいよ、寝させてやるぜ?」 ナギは、寝起きの頭を軽く掻いて、口説きながらアキラに口づけしようと顔を寄せてくる。 「…もう、」 弱わ弱わしく抵抗するが、見つかった時点で逃げられないと諦めたので、激しく拒否はしないアキラ。 代わりに顔をしかめ皮肉を呟く。 「も…ヒゲくらい剃ってからにしてほしいんスけど…」 「悪い悪い、しっかし、本当…同じ男とは思えないくらい綺麗だな…サクヤ」 アキラのつるんときれいな顎に触れながらそんなことをいう。 「……」 「楽でいいな」 ヒゲ剃り必要ないから…と、言外に含んで笑う。 「…(ムカ!)」 疲れているせいか… かなり苛々してしまうアキラ。 ナギの冗談も不機嫌な顔を表にだしてしまう… 無言になったアキラにナギは… 「無理させねぇから…な、いいだろ?」 微笑んだまま、断定的に誘って…アキラの腰を抱いて歩きだす。 「…はぁ、オレ…途中で寝るかもしれない…」 気だるそうにポソッと呟いて…ナギに連れ去られる。 「…終わったらいくらでも寝てけよ、俺より若いのにだらしねぇな…」 くくっと笑いながら言うナギ。 コトの最中は眠らせないと含んで… 「どーせ、」 ふん、と鼻を鳴らして諦め口調で呟く…。

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