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第112話
「…へんな趣味」
ぽそっと呟く、髪をとかれていたアキラだが、これ以上ここにいたら良いことはないと思い服を身につけはじめる。
「別に趣味じゃ…あ、そうそう、俺も今日はPM3時から仕事だから、よく寝てたけど起こしたんだ」
そう言うナギは、もう支度が整っている。
「3時!?今は?」
すっかり熟睡していて時間を忘れていたアキラ…
みずき、迎えにきてるんだよな…
「ん?14時50分くらいか…」
「…もう?」
朝になってからはみずきに連絡してない…
心配、してるだろうな…
「どうした?」
「いえ…帰らなきゃならないんで…」
また、胃を痛めさせてしまっているかも…
そう心の中で心配しながら支度を整える。
「あぁ、だな。下まで送っていってやるよ…」
「…え、それは助かります。けど時間大丈夫すか?」
これ以上絡まれるのは御免なので付いてきてもらえると助かる。
「へーき、あ、髪結ぶな、もう少し見ていたい…」
そっと口づけしながら…
髪を結ぼうとしたアキラを止めるナギ。
「…じゃ、帰ります」
息をつき、髪を結ぶのをやめて、鞄を手にとって立ち上がろうとする。
ナギは、そのアキラを手伝い立たせながら…
細い身体を支えて抱き寄せ歩き出す。
「可愛いな、ウェーブかかると実際より幼く見える…」
満足そうにつぶやくナギ。
「…あぁそうですか」
勝手に人の髪で遊んでおいて、ちょっとムカついているが、ここで逆らってもはじまらないのでそっけなく言葉をかえす。
「…あるな」
歩きながら携帯電話を見ると、やはりみずきからの着信履歴が数回ある。
気になったがナギの隣で電話をかける訳にもいかない…外に出てからかけてみよう…と頷くアキラ。
「何?携帯電話?番号くれよ」
すかさず聞いてくるナギ。
「駄目…」
「チッ、なら代わりにコレ」
「…なんですか?」
「会員制の、いわゆるそっち系の店の名刺、俺、勧誘担当だから…」
「いいっすよ、もぅ」
うんざりな顔をする。
「そー言うな、ま、俺も手当たり次第って訳じゃなく…かなり高ランクの奴しか誘わねぇし、客もVIPクラスの奴ばかりだから安心プラス金も入る…出勤はなし、アポとって…会って寝る、金は客の満足度次第、手軽だろ?」
さらに薦めてくるナギ。
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